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小悪魔8 12スレ目 282、304、340、452 始まる前に 括弧無しは小悪魔の心中 丸括弧は心中または小言 【】は地の文 まぁそんな感じで 私は小悪魔。紅魔館の図書館でパチュリー様に仕えています。 パチュリー様ったらいっつもいっつも図書館に居て‥‥‥。たまにはお外に出れば良いのに。 小悪魔「パチュリー様!紅茶持ってきましたよ。」 パチェ「ん、ありがと。ここに置いといて。」 小悪魔「パチュリー様ぁ。たまにはお外にお出かけにならないのですか?」 パチェ「出る必要が無いわ。」 小悪魔「毎日図書館に居たら体に悪いですよ。」 パチェ「あなたは私が不健康に見えるの?‥‥‥ごほごほ。」 小悪魔「見えます。」 パチュリー様の行動は「紅茶、読書、魔道書の執筆、居眠り、トイレ」くらい。たまにお嬢様や咲夜様と食事を取る程度。取ると言ってもパチュリー様は食事を取らなくてもいいので二人に合わせて軽く口に運ぶ程度。 私がパチュリー様にとやかく言う事もできないけど、貧血や喘息が治ればパチュリー様は誰にも負けない魔女になれるに違いないわ。 小悪魔「私はパチュリー様の事を思って言ってるだけです。」 パチェ「‥‥‥。そうね、たまには出てみようかしら。」 小悪魔「!」 パチェ「でも私はここに残るから代わりにこあ、あなたが行ってきて。」 小悪魔「ちょ、それじゃ意味無いじゃないですか!」 パチェ「一回で分かりなさいよ。あなたに休みを与えるわ。」 小悪魔「え、パチュリー様?」 パチェ「あなたたまに外に抜け出してるみたいだけど、いつ見つかるかで心が休まってないでしょ?あなたが居ない間は紅魔館のメイドでも置いとくからしっかり遊んできなさいよ。」 小悪魔「あ、ありがとうございます!そ、それであの~、どのくらい‥‥。」 パチェ「いつまででもいいわ。ただし、必ず戻ってきなさい。図書館のメイドを任せられるのはあなたしか居ないんだから。」 パチュリー様からの意外な言葉に驚いたけど、任せられるのは私しか居ないだなんてそんなに私の事を思っててくれたなんて。 小悪魔「は、はい!必ず戻ってきます。ですから、待っててください!」 パチェ「‥‥‥‥‥死亡フラグ‥‥。」 小悪魔「うっ‥‥だ、大丈夫ですよ。パチュリー様を残して先に死ぬなんてそんなことできません!」 パチェ「じゃあ私が先に死ぬのね。」 小悪魔「パ、パチュリー様ぁ~。」 パチェ「もう、分かったから、さっさと行きなさい。」 小悪魔「あ、は…はい!でわ、行ってきます!」 もう、パチュリー様酷いんだからぁ。でもお茶目なパチュリー様が見れてちょっと得しちゃったかも。 【図書館の通用窓から紅魔館内に移動し、門に向かう小悪魔。門には門番の美鈴が昼寝をしていた。】 小悪魔「あ、美鈴様、お疲れさまです。」 美鈴「う…ん?あ!ひえぇぇ!す、すいません~、サボってませんよぉ~。ってあれ、こあ?ど、どうしたの?」 小悪魔「パチュリー様からお休みを頂いたんです。こるから出掛けようと。」 美鈴「パチュリー様から?5分?10分?」 小悪魔「いえそれが、必ず戻ってくるという条件で無期限なんですが‥‥。」 美鈴「な、なによそれ!私なんか真面目に仕事してるのに休みなんてないのに~。」 小悪魔(今、居眠りしてませんでした?) 美鈴「ん?今何か言った?」 小悪魔「な、何も言ってませんよ!」 美鈴「ま、いっか。気を付けていってらっしゃい。パチュリー様こあの事結構信頼してるみたいだから必ず戻ってくるのよ。」 小悪魔「もちろんですよ。美鈴様もお体にお気を付け頑張ってください!」 【紅魔館を離れどこに向かうか分からない小悪魔を見ながら仕事に戻る美鈴】 美鈴「はぁ、私もこあみたいな部下がいれば楽しく仕事できそうなんだけどなぁ。さてと、もう一眠りするかな。‥‥‥‥すやすや‥‥。」 魔理沙「お!門番の奴またサボってやがるぜ。どこぞのサボタージュより使えねえな。」 霊夢「まあ、居ても居なくても変わらないからいいんじゃない?とりあえずお邪魔するわね。」 【ところ変わって小悪魔。誰からも咎められる心配もなく大空を自由に飛び回ってた。】 小悪魔「うわ~~、気持ち良いわぁ。パチュリー様もくれば良かったのに。」 【しかしあまりにもはしゃぎすきたせいかすぐに疲れてきた。】 小悪魔「はぁ、私も運動不足かしら。ちょっとあそこの湖で休もうっと。」 こんな森の中にも湖があったのね。チルノちゃんがいつもいる湖より大分小さいけど新しい発見ね! 【湖の周囲は3~400mくらい、湖と言うよりは池と言った感じである。】 はぁ、外ってこんなに気持ち良かったっけ。地面に寝そべっても何にもぶつからないなんて。このまま転がって湖一周しちゃおうかしら。 【ごろごろと転がりながら池の周りを廻り始める小悪魔。はた目から見たら精神異常者じゃないかと思われるくらいの勢いで転がっている。】 小悪魔「今の私は誰にも止められないのよぉ!!」 【転がっている途中、ぐるぐる廻る視界の中に青い物体が見えた。】 小悪魔「え!だ、誰?」 うっそ~。こんな姿誰かに見られたらもう私ごろごろできないじゃない! 【転がるのをやめてぐるぐる廻る視界のなか青い物体を集中して見つめる。青い物体の正体、それはチルノだった。】 チルノ「あらあらこあちゃん、何してるの?楽しそうね。」 小悪魔「チ、チルノちゃん?」 まさかのチルノちゃんの登場に驚いて立ち上がった私。だけど勢い良く転がってた所為かクラクラするわ。 チルノ「あ、こあちゃん!危ない!」 どっぼ~~ん!!! つ、冷たい!まさか落ちちゃった?湖に?は、早く、早く出ないと!! 【平行感覚を失ったうえに突然の池ポチャ。上も下も分からずに水中でもがく小悪魔。チルノもこれは危ない!と直感したが水中で暴れる小悪魔を安全に池から出せるとは思えないとそこだけは冷静に考えていた。】 い、息が‥‥‥く、苦しい‥‥よぉ‥‥‥‥‥。 ‥‥た‥‥た‥‥す‥け‥‥‥‥て‥‥‥‥‥‥‥。 ・ ・ ・ ・ ・ 小悪魔「はう!!!だ、誰か!誰か助けて!!チルノちゃん!!!‥‥‥あ、あれ?」 ここは?‥‥布団の中? ここは?‥‥チルノちゃんの家? チルノ「あ、起きた!大丈夫?こあちゃん。」 小悪魔「あ、チ、チルノちゃん?私は‥‥。」 チルノ「もう、焦ったわよ。急に池に落ちちゃうんだから。」 小悪魔「チルノちゃんが助けてくれたの?ありがとう。」 チルノ「あたしだけじゃないわよ。」 〇〇「あっ!こあちゃん、起きた?よかったぁ。」 小悪魔「ひゃ!〇〇さん!」 チルノ「近くにいたから手伝ってもらったのよ。いくらあたいが最強だっつってもあんなに転がってる奴は手に余るわ。」 小悪魔「ちょ!チルノちゃん!」 〇〇「え?誰が転がってる?」 チルノ「えっとねぇ、こあちゃんが」 小悪魔「わーーわーーー!!私もう元気よ!!ほらこんなに元気!!‥‥あ、あれれ?」 【チルノの言葉を遮って元気アピールをしながら立ち上がったがまだ気分が悪く立ちくらみを起こしてしまった。そしてそのまま〇〇に向かって倒れこむ。】 〇〇「おっと!まだ気分が優れないんじゃないか?もう少し寝てなよ。」 小悪魔「ひ!あ、ご…ごめんなさい!そ、そのこれは、その、えと‥‥。」 〇〇「俺は大丈夫だから落ち着いて。気分が良くなるまでここで寝てると良いよ。ここは俺んちだから。」 へ?この家は〇〇さんの家?この布団は〇〇さんの布団?これは‥‥‥‥‥。 【布団に倒れるように眠る小悪魔。それを見て〇〇は…。】 〇〇「久しぶりに外に出て疲れちゃったんだろうな。」 チルノ「疲れて寝たというよりは気絶してんじゃないの?」 〇〇「え?そうかなぁ。」 チルノ「とりあえず、あたしは帰るわ。こあちゃんが起きたらあたしの家に来るように言っといて。」 〇〇「お、おう。分かった。」 チルノ「それじゃ、こあちゃん、またね。いい夢見なさいよ、ふふふ。」 【不適な笑みを浮かべ〇〇の家を後にするチルノ。】 ──────────── 小悪魔「ん、ん~‥‥。」 〇〇「ん、こあちゃん、起きた?」 【小悪魔の声に気付きこたつから体を起こす〇〇。】 小悪魔「んあ、〇〇さん‥‥。ここ、〇〇さんの家?」 〇〇「そうだよ、ゆっくりしていっていいよ。」 はぁ、格好つかないなぁ。せっかく〇〇さんの家に居るのに変な所見られちゃったんだろうなぁ。 あれ?外に干してあるあの服、〇〇さんのかなぁ。でもあんな服、〇〇さんに似合わなそうだけど‥‥。私の服に良く似て‥‥‥。ん?私の服に‥‥私の…私の服!? 小悪魔「あ!あれ!私の服!!?」 〇〇「うん、びちょびちょだったから洗濯して干してるんだよ。」 小悪魔「え、じゃあ今私が着てるのは?」 〇〇「それは俺の浴衣、やっぱりちょっと大きかったかなぁ。」 ちょ、服がびちょびちょって事は下着は‥‥‥‥濡れてない。ってこれは私のじゃないわ。まさか〇〇さん、こんな趣味があったのかしら。 〇〇「あ、その…、下着はチルノが大ちゃんから借りてきたって。それでこあちゃんのはチルノが持って帰ったよ。チルノが『女の子の下着は男に見せるもんじゃない!』って」 小悪魔「で、でも、下着も着替えてあるって事は‥‥‥。」 〇〇「だ、大丈夫だよ!着替えはチルノ一人でやったから俺はそんなに‥‥じゃなくて、全然見てないよ!」 〇〇さんに見られちゃった?うぅ~恥ずかしいよぉ‥‥。 〇〇「そ、そういえばチルノが起きたら家に来てって言ってたよ。下着の事じゃないかな?」 チルノちゃんに一番見られてるからなぁ、行ったら何言われることやら。でも助けてくれた事もあるし下着の事もあるし、行かなきゃ。 【胸元に手をやる小悪魔。彼女は不安になると無意識の内にペンダントを触る癖がある。】 小悪魔「大丈夫かなぁ。‥‥‥あれ、ペンダントは?〇〇さん、私のペンダント知らない?」 〇〇「え?知らないけど…。」 小悪魔「え!うそ!そ、そんな、ペンダント、私のペンダント!どこ?どこなの?」 はっ!まさか湖に落ちたときに落としちゃったの?探しに行かなくちゃ! 小悪魔「〇〇さんありがとう、私、ペンダント探しに行かなくちゃ。」 〇〇「え、あ、ちょっとこあちゃん!」 【浴衣を脱ぎ捨て下着姿のまま庭まで走り干してある自分の服を着る。もう乾いていた。ということは大分時間が経っていたのだろうけど、今の小悪魔にはそんなこと考えてる余裕が無かった。】 〇〇「ちょ、ちょっとそんな格好で!」 〇〇さんに確実に見られちゃった!上下真っ黒ってこれ大ちゃんのよね?あの娘意外と‥‥ってそんな事考えてる場合じゃないわ! 小悪魔「〇〇さんありがとう、それじゃ、もう行くね。」 〇〇「待って!ペンダントは‥‥‥行っちゃった…。」 きっとさっきの湖にあるはずよ。まずはその湖を探さないと。 【池を探すために高くまで飛び上がったがさっきの池は意外にも〇〇の家のすぐ近くにあった。】 あれね、こんなに高く飛ぶ必要なかったわ。 【池に降り立って早速池の中を覗き込む。水は非常に綺麗で透明度も高い、しかしそれでも底が見えないほど深かった。】 ここに落としてたら見つかりそうもないわ。あとは転がってる時に落としたとしか‥‥。 【池の周囲を周りペンダントを探すが見つからない。まさか池の中にと思った瞬間に涙が溢れてきた。】 小悪魔「私の…ペンダント‥‥、〇〇さんがくれた…ペンダント…、〇〇さんが‥‥‥うっ、うぅっ、うえ~~~ん!ペンダントないよぉ!え~~ん、え~~~~ん!」 〇〇「あ、いた!ってどうしたの!?」 小悪魔「えぇ~~ん、〇〇さんに…〇〇さんにもらった‥‥ひぐっ…ペンダント、なくしちゃったのぉ‥‥うえぇ~~~ん!」 【〇〇に抱きついて泣き叫ぶ小悪魔。その頭をやさしく撫でる〇〇。】 小悪魔「え~~ぇん、ごめんなさい!‥‥私、うぐっ‥‥私、せっかく〇〇さんが‥‥ぅえぇ~ん。」 〇〇「そ、その、ごめん!ペンダント‥‥‥ここにあるんだ…。」 小悪魔「えぇ~ん‥‥ひぐっ…うぐっ‥‥え、わ、私の‥‥‥ペンダント?‥‥ひっく…。」 〇〇「そう、チルノちゃんが『そのペンダント隠しておけば面白いものが見れる』って‥‥‥、でもまさかこんなことになるとは…ごめん!」 小悪魔「私の…うぅ、…〇〇さんからもらったペンダント‥‥あったのね‥‥。よ、よかったぁ…うっく。」 〇〇「ごめん、本当にごめん!」 小悪魔「見つかったんだからいいですよ。‥‥‥‥あ!私の方こそごめんなさい!…抱きついちゃったりして‥‥。」 〇〇「え、あ…あぁ…いいよ、気にしないで。」 小悪魔「その、えっと‥‥あ、そうだ!チルノちゃんが呼んでたんだよね。私行かなくちゃ。」 【振り返ってチルノの家に向かおうとする小悪魔。その小悪魔の手を引き、引き止める〇〇。】 小悪魔「ひゃ!え、どうしたの?」 〇〇「体冷えちゃったでしょ?俺の家行ってあったまってからにしようよ。それにこあちゃん、チルノの家わからないでしょ?俺が途中まで一緒に行ってあげるから‥‥。」 小悪魔「〇〇さん‥‥‥。じゃ、じゃあお言葉に甘えちゃおっかな、えへへ。」 【手をつないで〇〇の家に向かう二人。その姿を木の影から見ているものが一人。】 チルノ「ふふ、計画通りってやつね‥‥。」 ───────────── 【手をつなぎながら〇〇の家に向かう二人。小悪魔は顔を赤らめ俯いたまま〇〇のやや後ろを歩いている。】 はぁ、さっき思いっきり泣いちゃったし〇〇さんに抱き付いちゃったし私の気持ちなんてお見通しよね。 【家に着いて〇〇がお茶を出す。二人きりでうれしいはずなのだが今は少しでも早くここから逃げ出したい気持ちの小悪魔。そこで話を切り出した。】 小悪魔「あの、そ、そろそろ行かないと、チルノちゃんに悪いし…。」 〇〇「もう行っちゃうの?もっとゆっくりしていっても構わないけど‥‥。そういえば大分時間経っちゃったね。チルノも心配してるかな?いや、チルノならそんな事思わないかもね。」 【ちょっと熱いがお茶を飲み干し立ち上がる小悪魔。〇〇も途中まで送ると言ったので立ち上がる。】 〇〇「こっちこっち、この辺は暗くなると迷いやすくて危ないからまだ明るいうちに向かった方がいいよ。」 小悪魔「あ、ありがと。」 【さっきみたいに手をつなげず、少し離れて後ろからついていく小悪魔。数分歩いたところで〇〇が前方を指差す。】 〇〇「ここを真っすぐ行くと大きくて太い木があるからその木まで行ったら右ね。すぐ近くにチルノの家があるはずだから。」 小悪魔「ありがと‥‥、そ、それじゃ。」 【足早に立ち去ろうとする小悪魔の後ろから声をかける〇〇。】 〇〇「まさかこあちゃんがあのペンダント持っててくれたなんてうれしいよ。またいつでもうちに来ていいからね。ってかその…また来てね。」 小悪魔「え?あ、はい!また必ず来ます!」 【〇〇が言った言葉に〇〇との距離を遠ざけていた自分が惨めに思えた小悪魔。自分の事を気にかけてくれる〇〇の言葉に先程までの小悪魔は消え去りすっかり元通りの小悪魔へと戻った。】 小悪魔「〇〇さん、ありがとう。また来ますからねぇ。」 〇〇「なんだか、元気になったみたいだな。よかったよかった。それじゃ、気を付けて。」 もう、私ったら馬鹿ね。自分で思い込んで自分で落ち込ませて、〇〇さんは何も悪くないのにね。 【そう自分に言い聞かせチルノの家へ向かう。】 確かこの木の右側ね。‥‥‥あれかしら?この辺だと家って言ったらあれくらいしか…。 【森の中にたたずむログ調の小屋、これがチルノの家だ。】 小悪魔「チルノちゃ~ん。来たわよ~。」 チルノ「もう、遅いわよ!〇〇と何してたのよ。」 小悪魔「べ、別に何も…。」 チルノ「まぁ、とりあえず入りなさいよ。」 【チルノに促されるまま家に入る小悪魔。中は割とすっきりしていてチルノの性格からは想像もできないほどきれいにまとまっている。】 小悪魔「きれいな家ねぇ。ここチルノちゃんの家よね?」 チルノ「その言い方ちょっと失礼じゃない?こあちゃん。まぁ、あたしの家じゃないけど。」 小悪魔「え?どういうこと?」 チルノ「大ちゃんの家なんだけど今大ちゃんいないから借りてるだけなのよ。」 小悪魔「へぇ~。」 【なぜ居ないのか、気になったが野暮な事は聞かないようにした。なにか訳ありなんだろうと自己解釈しその話題は終わった。】 小悪魔「それで、呼び出した理由は一体何?」 チルノ「〇〇の事に決まってるでしょ。こあちゃん、〇〇の事好きなんでしょ?」 【突然のチルノの言葉に固まる小悪魔。アイシクルフォールとかパーフェクトフリーズとかそんなチャチな物では断じてない。まるで小悪魔の時間だけが止まっているかのように完全に固まっている。】 チルノ「だからお手伝いしてあげようと思ってね。‥‥って固まりすぎよ!」 小悪魔「‥‥‥‥‥。」 チルノ「まったく、そのくらいの演技であたしが騙せるとでも思ってるの?」 小悪魔「‥‥‥‥‥。」 バタッ 【突然倒れる小悪魔。気絶しているのか、虚ろな目をしながら何やらぶつぶつと呟いている。】 チルノ「ちょっと!しっかりしなさいよ!」 【体を激しく揺すり意識を戻させるチルノ。そのかいあってか小悪魔はどっかの世界から戻ってきた。】 小悪魔「はっ!わ、私は‥‥。」 チルノ「もう、好きなんでしょって言っただけなのに何考えてたのよ。」 小悪魔「あ、そ…その事は〇〇さんには…?」 チルノ「まだ言ってないわよ。」 【依然、固まったまま目が泳いでいる。そこでチルノは…。】 パチン! 小悪魔「きゃっ!」 【小悪魔の頬を軽くはたいた。】 小悪魔「チ、チルノちゃん!なにするの?」 チルノ「しっかりしなさいって、そんなんじゃ逃げられちゃうわよ。」 小悪魔「で、でも。そんな急にこ、告白とかそんな。」 チルノ「お、割と聞いてたのね。それに急じゃないでしょ?こあちゃんは今日〇〇に会って今日〇〇が好きになったわけじゃないでしょ?」 【チルノの一言に納得して話を聞き入る小悪魔。しかし、その心は不安でいっぱいだ。なぜならこっちがその気でも相手には興味が無かったら意味が無いのだから。】 チルノ「大丈夫よ、ちゃんと手は打ってあるから。」 小悪魔「何をしたの?」 チルノ「起きた時、ペンダントが無くなってたでしょ?あれは‥‥。」 小悪魔「そ、そうだわ!なんてことしてくれたのよ!もう、下着姿は見られちゃったし泣き姿も見られちゃったし挙げ句の果てには抱き付いちゃったし‥‥しくしく。」 チルノ「ちゃんと最後まで聞きなさい!その下着姿が大事なのよ。こあちゃんが今付けてる下着、ただの下着じゃないのよ。」 【チルノの言葉に目の色を変えて聞き入っている。普通の下着じゃない?それが大切なこと?】 チルノ「その下着、ちょっとした催眠効果があってね‥‥。」 小悪魔「私の事好きになるとか?でもそんなので付き合っても…。」 チルノ「だ~か~らぁ、最後まで聞きなさいって!で、その催眠効果なんだけど、その人を好きになるとかじゃなくて『潜在意識を呼び覚まし強調させる』効果があるの。」 【よくわからない様子の小悪魔。潜在意識?それを強調?そうするとどうなるの?】 チルノ「そうねぇ、簡単に説明できるかしら。たとえばリンゴとミカンがあるとする。両方同じくらい好き。でも過去にリンゴで嫌な事、ミカンで良い事があった時、この効果をかけるとリンゴは嫌いでミカンがすごく好きになるの。」 小悪魔「え、じゃあ、まさか‥‥。」 チルノ「わかった?つまり心のどこかで〇〇がこあちゃんに好意をもってればこあちゃんが好きになる。逆なら嫌いにってこと。」 【ふと〇〇さんと居た時の事を思い出す。まさか、そんな、私なんかを…。】 チルノ「心当たりがあるみたいね。」 小悪魔「あ、そうだ、下着返さないと。洗って返すから待ってて、それと私のは?」 チルノ「その下着はいつでもいいけど、それとこあちゃんの下着は〇〇の家よ。持って帰ったって言っておいたけど本当は洗面台に置いてきたわ。」 小悪魔「見つけられちゃったらどうするのよ!」 チルノ「まぁ、確実に見つかるでしょうね。その時の反応が、〇〇の性格からして『洗って干しておきたかったけどこあちゃんの許可無しに触れない』って感じだったらもう告白しちゃって良いと思うわ。」 それは言うなれば、次に〇〇さんの家に行ったときに私の運命が変わると、大袈裟かもしれないけどそういう事。どちらに転んでも私は受け入れるしかない。もし悪い方に転んでしまったら私はこの先どうすれば…。 チルノ「今日はもう暗くなっちゃったしここに泊まって明日行けば?〇〇に夜は危ない、とか言われたんじゃない?」 小悪魔「…うん。」 チルノ「こあちゃん、良い方向に進んでるわよ。」 小悪魔「‥‥‥‥‥。」 【顔を真っ赤にして俯く、まさか本当に、という気持ちがあるがその反面本当は自分の空回りだったら、と思うとうれしい気持ちも吹き飛んでしまう。そんな気持ちの上下で不安定ながら今は平均して0の気持ちだ。】 チルノ「それじゃ、今日は一緒に寝てあげよっか?」 小悪魔「へ?一緒に?」 チルノ「恐いでしょ?明日になるのが。一人で寝て泣かれるのも困るし。」 小悪魔「…うん。一緒に寝て。」 【布団を一つだけ敷いて一緒に寝始める。】 小悪魔「‥‥‥‥うぅ、‥‥しくしく‥‥‥。」 チルノ「やっぱり泣くとは思ったけどね。‥‥よしよし。」 【小悪魔の頭を撫でながら仲良く眠りについた。】 【翌朝、小悪魔が目を覚ますと隣にチルノの姿はなかった。】 小悪魔「ん、チルノちゃん?」 【周りを見渡しても呼んでも返事が無い。どうやら家の中には居ないようだ。】 小悪魔「どこ行ったのかなぁ。」 【起き上がろうと手を付いたときに枕が濡れているのに気付く。ついでに自分の両目も。】 小悪魔「あれ、これ。私の…涙?私泣いてたの?」 【自覚していなかったがどうやら自分は泣いていたんだと理解した。そして昨日の夜、チルノから聞いた催眠効果の事も思い出した。】 そうだわ、今日、〇〇さんの家に行った時に覚悟を決めなくちゃ。せっかくチルノちゃんが作ってくれた機会だもの。 チルノ「ただいまぁ、あ、起きたのね。」 小悪魔「あ、おはよう、チルノちゃん。どこに行ってたの?」 チルノ「魚採ってきたのよ、朝食べるの。」 小悪魔「チルノちゃん、釣りできたっけ?」 チルノ「やったことないわよ。罠仕掛けて採ったのよ。」 チルノちゃん、罠作れるんだ。すごいなぁ。 【採ってきた魚を特に工夫することもなく塩焼きにするチルノ。でも今の小悪魔にその姿は眩しく輝いていた。】 チルノちゃんが料理(?)してるなんて、私チルノちゃんの事、ちょっと誤解してたかもしれないわ。人の事なんか気にしない性格だと思ってたけど…。 チルノ「こんなのだけど、どうぞ。」 小悪魔「ありがとう。いただきます。」 うん。焼き魚だわ。普通の焼き魚だけど昨日のチルノちゃんの事を考えるとなんだか心がこもっているみたい。 【一通り食べ終え一緒に片付けをする。片付けをしている最中、チルノが話し始めた。】 チルノ「こあちゃん、分かってるわよね。今日は〇〇の所に行くんでしょ?」 小悪魔「う、うん。でも不安だわ、本当にあの言葉は私に好意を持ってる言葉なのかな?って。」 チルノ「自信持ちなさいよ!〇〇は自分の事が好きなんだ!って思わないと上手く行くものも失敗しちゃうわよ。」 【チルノの言葉に頷く小悪魔。自信を持つ事は大切だが、やはり不安は拭えない。もしダメだったら…という気持ちが心の隅に生まれてきてしまう。】 チルノ「さ、片付けも終わった事だし、さっそく向かうわよ。」 小悪魔「え?もう?」 チルノ「善は急げって言うでしょ?」 小悪魔「善、なのかな?」 【チルノと一緒に〇〇の家に向かう。家に近付くたびに高鳴る鼓動を抑えようと深呼吸したり遠くを見つめてみたりするが、効果は無い。】 あぁ~、一体なんて言えばいいのかしら。ストレートに好きです?それともお友達から?控えめにこれからもよろしく? 【何か考え事をすると時間の経過が早くなるもので、気が付いたら〇〇の家の前に着いていた。】 チルノ「あたしにできるのはここまで。後はこあちゃんの問題ね。」 小悪魔「うん…、頑張ってみるね。」 【玄関の前に立って大きく深呼吸を三回。そして声をかける。】 小悪魔「〇、〇〇さ~ん‥‥いますか?」 〇〇「は~い、あ、こあちゃん。おはよう。」 【いつもと変わらぬ〇〇の姿に少し安心する小悪魔。】 小悪魔「お、おはよう‥‥ございます。」 〇〇「ほらほら、上がっていいよ。」 小悪魔「そ、それじゃあ、お邪魔します。」 【ぎこちなく家に上がる小悪魔。和室に案内されこたつに入ってるよう言われる。】 〇〇「今、お茶持ってくるよ。」 小悪魔「あ、いや、そんな…差し支えなく‥…。」 〇〇「ん、ん~‥‥。」 【緊張しているせいか言葉遣いが普段と異なって妙に丁寧になってしまった小悪魔。とりあえずお茶を持ってきて話しを始める〇〇。】 〇〇「その、あのさぁ、一つ言っておかなきゃならないからさ…。」 小悪魔「あ、え?ど、どうしたの?」 〇〇「昨日のペンダントの事、チルノちゃんに言われたとはいえあんなになるとは思わなかったし、あんなに大切にしてくれてたなんて…。だから、ごめん。そしてありがとう。」 小悪魔「そ、そんな!私は〇〇さんからもらった大切なペンダントだからあの時は必死で…。」 〇〇「だからうれしいんだよ。」 そんなこと言われちゃったら私もうれしくなっちゃうよ。今度は私が言わなくちゃ。 小悪魔「あ、あの。〇〇さん。」 〇〇「ん?なに?」 小悪魔「私も今、言っておきたい事があるんだけど、いいかな?」 〇〇「うん、いいよ。」 落ち着け、落ち着くのよ私。落ち着いて順番に話していけばきっと大丈夫。 小悪魔「あの、私‥‥〇〇さんと…お友達に‥‥‥なりたいの。」 〇〇「‥‥‥もう、友達だと思ってたのは俺だけ?」 小悪魔「え、わ…私と、お友達だって思ってくれてたの?」 〇〇「ずっと前から友達だと思ってたよ。俺の中ではこあちゃんが一番の友達。というか友達少ないけどね、はは。」 〇〇さんがお友達だって思っててくれたのに私ったら何やってるのかしら!だったらもっと思い切って言わなくちゃ。 小悪魔「そ、それじゃあ、お…お友達‥‥以上は?」 〇〇「恋人って事?」 小悪魔「ひゃ!そ、そんな大それた事は!ま、まだ早すぎるわ!」 〇〇「そう?俺はその…。」 小悪魔「えっとその‥‥‥、恋…人‥‥だなんて言葉にしたら…、あの…その…。だ、だから、お友達からゆっくり‥‥、い…いい関係を‥‥‥ね?」 せっかくのチャンスなのに私ったら何言っちゃってるの。これじゃあ、私の方から距離を置いてるみたいじゃない。 〇〇「それじゃぁ、今度からもっと図書館に行っていいかな?」 小悪魔「え、あ、うん。待ってる。私も…〇〇さんに会いに来ても‥‥いいかしら?」 〇〇「パチュリーに叱られないようにな。」 小悪魔「ありがとう。あの、それじゃ‥‥そろそろ、帰るね。ま、また‥‥‥会いましょ。」 〇〇「うん、絶対行くから。」 小悪魔「‥‥‥///」 【赤くなった顔を隠すように俯いて〇〇の家を出る小悪魔。外に待ってたチルノが一言。】 チルノ「その顔は上手くいったみたいね。」 小悪魔「うん…まぁ、ゆっくりと‥‥だけどね。あの、チルノちゃん‥‥‥ありがとうね。」 チルノ「いいのよ。あたいは幸せになってく二人が見れればね。」 小悪魔「色々あったけど、結果が良ければ大丈夫よね。そろそろ戻るわ。機会があったらいつでも図書館にきてね。」 チルノ「門番がいるんじゃないの?」 小悪魔「私の友達って言えば大丈夫だと思うよ。ダメだったら私が作った秘密の入り口があるから。」 チルノ「あんたが作ったのなんてもうバレてるんじゃないの?」 【他愛もない会話を軽くしてチルノは森へ、小悪魔は紅魔館へと戻った。】 紅魔館 小悪魔「パチュリー様!ただいま戻りました!…ってこれは一体!?」 【図書館に入ると館内中に2、30を超えるメイド、給湯室にも3人のメイドがいた。】 パチェ「早かったわね、こあ。もっとゆっくりしてきても良かったのに。」 小悪魔「パチュリー様、これは一体どういうことですか?こんなにメイドの皆さんが…。」 【メイドの一人が紅茶を持ってきた。テーブルに置かれた紅茶を眉間にしわを寄せながら飲むパチュリー。】 パチェ「これくらい居ないと貴方の代わりは補えないのよ。‥‥まだ補えてないけど。」 小悪魔「それはありがたいですが…。」 パチェ「貴方達、こあが来たからもう戻っていいわよ。」 【ぞろぞろと図書館中から出入口に集まってくるメイド達。図書館を出ながらしきりにお礼を言ってくる。】 「こあ様、ありがとうございます。」 「お早いお帰り、感謝いたします。」 「お羽、伸ばせましたか?こっちはもう‥‥あ、いやその、なんでもないです。ありがとうございます。」 【なんだか良く分からないが擦れ違うたびにお礼を言われる。そんなに早く帰ってきたことがうれしいのだろうか。】 小悪魔「パチュリー様、何かなされたんですか?」 パチェ「さぁ?」 私には分かるわ。パチュリー様が怒るときに発するあの魔力、あれを感じてたに違いないわ。確かに図書館の仕事って私しかしてないから普通のメイドには大変かもしれないけど、あんなに怯えるまで怒らなくても…。 パチェ「部屋に戻るわ。紅茶をおねがい。」 小悪魔「あ、はい。」 【部屋というか本棚に囲まれた一角にパチュリーの寝室のような部屋がある。紅茶をいれて寝室に向かう小悪魔。本棚の本の並びがバラバラになっているのを見るとこれからの仕事の多さに肩を落とす。】 小悪魔「お持ちしました。」 パチェ「とりあえずそこに置いといて。それでこあ、貴方にはこれから週一度休みを与えるわ。」 小悪魔「え!?どうしたんですか、急に!」 パチェ「貴方の顔を見れば一発よ。早く図書館から出てある場所に行きたいって顔。」 小悪魔「私、そんな具体的な顔してるんですか?」 【持っている本をパラパラとめくるパチュリー。】 パチェ「ここに書いてあるわ。 そんな顔をするのは普段から長時間の拘束を強いている証拠。一週間に一日くらいは暇を与えてはどうだろうかってね。」 小悪魔「それはうれしいんですが、パチュリー様はいいんですか?また図書館中にメイドを置くんですか?」 パチェ「咲夜に任せるわ。まだ彼女の方がマシね。貴方程ではないけど。」 小悪魔「そんな、咲夜様よりだなんて!」 パチェ「図書館の中でのみよ。」 小悪魔「それはそうですが…。」 【咲夜より上だと言われ焦るが図書館内のみと言われ落ち着きを取り戻す小悪魔。それでもうれしいことには変わりはないのだが…。】 パチェ「それと、チルノが尋ねてきたら通してちょうだい。」 小悪魔「え?チルノちゃんが?はぁ、わかりました。では仕事に戻りますね。」 【なんでチルノちゃんが?と思いつつも本棚を整理し始める。これは今日中に終わりそうもない。小悪魔が戻るのがもっと遅かったら一体どうなっていたのだろうか。】 (こあちゃ~~~ん、いる~~~ぅ?) 小悪魔「あれ?この声は。」 チルノ「あ、いたいた。」 小悪魔「やっぱりチルノちゃんだったの‥‥え?〇〇さんも?」 〇〇「いや、必ず行くって言ったから早速来ちゃった。」 チルノ「あたいはパチュリーのとこ行くから二人でイチャついてなさいよ。」 小悪魔「チルノちゃん!なにを‥‥‥////」 【小悪魔からパチュリーの居場所を聞き寝室へ向かうチルノ。】 パチェ「来たわね、今解いてあげるわ。」 【今パチュリーが解いたもの、それはチルノにかかってた魔法。】 パチェ「知能を急激に上昇させる魔法、普通の人なら知恵熱で自然発火するけど冷気を操る貴方になら使えるわ。」 チルノ「はぁ、疲れたぁ。頑張ったんだからジュースでもちょうだいよ。ってかそれならレティでも良かったんじゃないの?」 パチェ「彼女にも使えるけど貴方と違って自分の頭だけ局所的に冷やすことはできないのよ。もし彼女に使ってたら辺りは凍死体の山ね。それに貴方はこあと仲がいいでしょ。」 チルノ「あたいは涼しい方がいいけどね。それよりあの二人どうするのよ、熱くて近寄れやしないわ。」 【遠くから二人を見つめるパチュリーとチルノ。二人ともモジモジしててぎこちない。】 パチェ「ふぅ、まったく、世話が焼けるわね。 『モジモジする二人をスムーズにして尚且つ赤髪に仕事を始めさせる方法』は…っと。‥‥‥あった、これね。」 チルノ「そんなのあるの?」 パチェ「私の図書館の本に不可能の文字はそんなに無いわ。」 おわり うpろだ1036 ここは紅魔舘の図書館である ○○「こんにちは~ってあれ?だれもいない?」 タッタッタッタッ こあ「はぁはぁ、こ、こんにちは○○さん今日はどのようなご用件でしょう?」 ○○「こんにちは、こあちゃん。今日はパチュリーさんに呼ばれてきたんだけど……」 こあ「それならこちらへどうぞ」 パチュリー「あら、いらっしゃい。早かったのね」 ○○「こんにちはパチュリーさん」 パチュ「小悪魔、紅茶を持ってきて3、いや4人分」 こあ「わかりました。パチュリー様」 そういってこあは台所へ飛んでいった パチュ「いいかげんにその「パチュリーさん」をやめてくれない?パチェでいいわ」 ○○「それならパチュリーさんも小悪魔なんて呼ばないで「こあ」でいいじゃないですか?」 パチュ「……言うようになったじゃない。まぁいいわ、今日はあなたに聞きたいことがあって来てもらったの」 ○○「なんですか?」 パチュ「あなたこあk、いや、「こあ」の事が好きなのよね」 ○○「……そうですが何か?」 パチュ「そのことを彼女は知っているのかしら?」 ○○「片思いってやつですよ。それに彼女を困らせるわけにもいかないし……」 パチュ「というわけでこの人を呼んだわ」 魔理沙「恋色の魔法使い、霧雨魔理沙、参上だぜ!!」 ○○「恋色って何色なんですか?」 魔理沙「……お前は痛いところをついてくるな。恋色は恋色だぜ?」 パチュ「……こほん、ということで魔理沙、○○に恋のナンやらを教えてあげて頂戴」 魔理沙「任せろだぜ!!まず、お前はもう少し我がままになった方がいい。相手がほしいなら力ずくだぜ!!」 ○○「力ずくって……弾幕じゃないんですから。それに俺がこあをもらっていったらこの図書館に司書がいなくなってしまいますが?」 パチュ「その辺ならどうにかなるわ。また使い魔を召還すればいいだけの話しだし」 魔理沙「というわけだぜ。安心して告白してこい!!」 こあ「紅茶持って来ました~。魔理沙さんいらっしゃい」 魔理沙「ほら言って来い○○!!」 ○○「あ、あのさ本を探してるんだけど一緒に探してくれないかな?」 こあ「えっ、あ、いいですけど。じゃ、じゃあ行きましょうか」 二人して図書館の奥の方へ歩いていった 魔理沙「……上手くいったな。これでいいのかパチュリー?」 パチュ「……これでいいのよ。こうした方があの子達にとってもいいはずだわ」 こあ「あ、あの、どの本をお探しですか?」 ○○「え、と、俺にでもできそうな魔道書を」 こあ「それなら……向こうの方ですね」 そういってこあは立ち止まった ○○「?どうしたのこあ?」 こあ「あ、あのですね!!ここからだと遠いので、て、手握ってもいいですか?飛んでいけば早いので……」 ○○「あ、ああいいよはい」 そういって俺はこあの手をとる こあ「○○さんの手、暖かいですね……って何言ってるんだろう私!!そ、それじゃあ行きますね」 二人の姿が宙を飛ぶ こあ「着きました○○さん」 ○○「おっとと、ありがとうこあ」 こあ「……そのですね、も、もう少し手を握ってていいですか?」 ○○「ん、別にいいよ」 こあ「……」 ○○「……」 こあ「……っ……うっ……」 突然こあが泣き始めた ○○「どうしたのこあ?」 こあ「わ、私、あ、あなたに謝らなきゃいけないんです。その、さっきの会話……」 ○○「え~と、多分魔理沙さんとパチュリーさんとの会話か」 こあ「その、はじめは聞く気なんてなかったんです。でも話しているのが聞こえちゃって……」 ○○「ど、どの辺あたりから聞いてた?」 こあ「え、とパチュリーさまがこあk、って言ってたあたりから……本当にごめんなさい」 ○○「……プッ、アハハハハハ!!」 こあ「!?」 ○○「ああもう何か吹っ切れたよ。ありがとうこあ」 こあ「えっ、あの……?」 ○○「俺はこあのことが好きだ。この幻想郷、いや、世界中で誰よりも愛している。この気持ちはきっといつまでたっても変わらない。そしてこの気持ちをくれたのは君なんだ。だから俺は君の事をずっと愛したい」 こあ「う、嬉しいです○○さん。私も○○さんのことが好きです!!」 ○○「あ、あれなんか俺も目から涙が……きっとこあからもらったんだな」 こあ「そうかもしれませんね……私が涙を取ってあげます」 ペロッ ○○「こ、こあ!?」 こあ「ふふっ、これでも一応小悪魔なので♪」 ○○「そうだったね、すっかり忘れてた」 こあ「○○さんったらひどいんですから~……さてこれからどうしましょう?」 ○○「う~ん、本は後でいいから庭に散歩でも行こうか」 こあ「そうしましょうか♪」 二人は手をつないだまま図書館のドアを開けていった おまけ 魔理沙「……帰ってこないな」 パチュリー「……そうね」 魔理沙「暇だから私は帰るぜ。ついでにこの本も借りてくぜ」 パチュリー「もってかないでー」 おまけのおまけ ○○の日記 ~~~と こうして僕たちは付き合うことができた そして僕はこの図書館の司書手伝いとして働いている。……門番よりかは良い待遇である 感謝の気持ちとして魔理沙には貸し出しカード(期限は3ヶ月)をパチェに発行してもらえるように頼んだ そしてパチュリーのことを、仕事以外ではパチェと呼ぶようにした おっとこあが呼んでるから行かなくちゃ えっと続き続き こあは今では良い奥さんとして一緒に暮らしていて、裕福とまではいかないが暮らしていけるほどの給料をもらっている そうそう、こあは使い魔として開放されて、自由を手に入れたみたい。でもパチェのことをまだ様付けで呼んでいる ふうこんなところかな こあ「○○さ~ん」 ○○「どうしたこあ?」 こあ「パチュリー様が結婚式は来週のいつか?って聞いてくるんですけど……」 ○○「水曜日って言っておいてくれ。あとこあ、お腹大丈夫か?」 こあ「大丈夫ですよ~。前みたいに飛ぶのは怖いですけど、……今ではあなたがいますし、それにこの子だっています。それに比べれば軽いものですよ」 ○○「そうか……うん、そうだよな。さて俺も手伝いを再開しますかな」 こあ「さぁいきましょう。あなた」 ○○「うん、行こう!!」
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小悪魔10 大図書館の片隅で(Megalith 2011/05/22) 「〇〇さん、頼まれていた本ってこれでいいですか?」 「ああ、うん、ありがとう。そこに置いておいて」 小悪魔が抱えていた本の束が、机の上でどさりと重い音を立てる。 「助かるよ、こぁの手が空いていて本当に良かった」 このだだっ広い図書館で自分の望む本を見つけ出すなんて、考えただけでも目眩がする。 魔法使いに「なりたて」の〇〇には、パチュリーのような知識も小悪魔のような経験も不足している。望む情報がどの本に記載されているか、推測することも難しかった。 「いいんですよ、〇〇さんの書いた小説好きですし」 そう言って、小悪魔は〇〇の向かい側に腰を下ろす。 彼女の動きに合わせ、ふんわりと髪が揺れた。 「でも〇〇さんも不思議な人ですよね」 「どうして?」 「『書きたいものがありすぎて時間がない、だから魔法使いになろうと思う』なんて、普通の人は考えませんよ」 そんな馬鹿げた望みを叶えたのが小悪魔の主人であったりするのだが、その主人も〇〇が魔法使いになった途端に、〇〇の世話を小悪魔に丸投げしてきた。 当人曰く「彼が自分の使い魔を呼び出せるまで、手伝ってあげなさい」とのことだが、魔法使いになった〇〇が図書館に入り浸っていることが気になったのかもしれない。 〇〇は小説の資料を探し回っているだけだが、時折禁書にまで手を伸ばす悪癖がある。禁書は別箇に封印されているが、〇〇は何故かその封印を突破してしまう。 パチュリーが〇〇を危険人物と認定するまで、時間は掛からなかった。 「パチュリー様も〇〇さんの小説、楽しみにしているんですよ。本人は隠してますけど」 くすくすと笑う小悪魔に〇〇の頬が緩む。その名前とは裏腹に、心が暖かくなるような笑顔だと〇〇は思っていた。 「今度はどんな話ですか?」 机に身を乗り出す小悪魔。〇〇は苦笑して原稿用紙を隠した。 「まだ完成してないから、お預け」 「えー、お手伝いしてるんだから少しくらいいいじゃないですか」 「パチュリーだって執筆中の魔導書なんて中途半端なものを他人に見せたり預けたりはしないだろう? 同じことだよ」 「むー」 頬を膨らませてすとんと戻る小悪魔。〇〇は仕方がないな、と呟いて、机の下に置いてあった鞄から原稿用紙の束を取り出した。 「じゃあ、これを読んで感想を聞かせてくれないかな」 「いいですけど、これって新しい連載の原稿か何かですか?」 「連載……かな、続き物になるかどうかは、小悪魔の感想次第だけど」 〇〇が言うと、小悪魔は首を傾げながら原稿用紙を捲る。 そこには元人間の魔法使いが、とある図書館で司書を務める女性に想いを寄せる物語が綴られていた。 魔法使いと司書の思い出が続き、小悪魔はその内容に目を丸くする。 総て、〇〇と彼女が経験してきた思い出ばかりだった。 「あ、あの……」 「感想は、最後に纏めてお願いね。私はその間にこっちの原稿を書き上げるから」 「は、はい」 自分が贈った万年筆で原稿を書く〇〇の姿を振り切り、小悪魔は原稿用紙の中の世界に戻る。 様々な思い出の果てに、魔法使いが女性に愛を告白する場面で原稿は終わっていた。 続けようと思えば続けられる。ここでお終いにしようと思えばお終いにできる。そんな場面だった。 「――あの、読み終わりました」 小悪魔が言うと、〇〇が顔を上げた。 いつもと変わらない柔らかい表情で、じっと彼女を見詰める。 「で、どうかな」 どういう風に続けたらいいと思う、そう訊かれて、小悪魔は答えに窮した。 〇〇がどんな意図で答えを求めているのか、今更疑問に思う余地はない。 だから、彼女は顔を伏せ、ぼそぼそと答えた。 「……すごく、面白いと思います」 「そうかい、それは良かった。それで……」 〇〇は小悪魔の手を取り、再度同じ質問をした。 「此処から先、どういう風に続けたらいいと思う?」 小悪魔は、顔を真っ赤に染め、小さく呟いた。 「……二人が、一緒に幸せになるような、そんな続きが読みたいです」 「そうか、じゃあ……」 一緒に、作ってみようか。 〇〇の言葉に、小悪魔は小さく頷いた。 大図書館の片隅で その2(Megalith 2011/05/22) 「小悪魔、〇〇はどうしたの?」 ついこの間想いを交わして恋人同士になった〇〇と小悪魔。 しかし、パチュリーが知る限り、二人が恋人らしいことをしている場面に遭遇したことはない。 万が一図書館内で不純異性交遊でもしようものなら一言注意しなくては、と意気込んでいたパチュリーにしてみれば、拍子抜けもいいところだ。 「〇〇さんなら、永遠亭に取材だそうですよ」 パチュリーの読み終えた本を整理しながら、小悪魔が答える。 「何でも、日常生活で活用できる応急処置の方法を物語にして新聞に連載するそうです」 文さんの依頼だそうで、そう言って、小悪魔は本を抱えて飛び立った。ぱたぱたという音が遠ざかり、パチュリーは首を傾げる。 「……おかしい、わよね?」 付き合ったばかりの恋人というのは、こう人目も憚ることなく砂糖を撒き散らすものではないのか。 図書館が砂糖工場になることも覚悟していたというのに、本当に拍子抜けだ。 「はたてさんの新聞でも今度連載を始めるみたいですし、〇〇さん頑張ってますよね」 本を戻した小悪魔が、パチュリーの元に戻ってくる。 その表情は明るく、〇〇が世間に認められるのが本当に嬉しいらしい。 「でも、そんなことばかりしてると、あなたと会う時間も取れないんじゃない?」 「あ……! ちょうどそのことでパチュリー様にご相談したいことが」 「何かしら? 休暇でも欲しいの?」 これまでまともな休みもなかったことだし、一日二日ぐらいなら休みを与えても良いかもしれない。パチュリーはそんなことを考えていたが、しかし小悪魔の次の台詞に心底驚いた。 「今度紅魔館の敷地内に〇〇さんの屋敷を建てるんですけど、そちらから通ってもいいですか?」 「はっ!?」 パチュリーは驚きのあまり、持っていた分厚い本を取り落とす。小悪魔が慌ててそれを拾ったが、パチュリーはそれどころではない。 「パチュリー様? やはりダメでしょうか」 しょぼんと肩を落とす小悪魔に、パチュリーが震える声で問う。 「だ、ダメっていうか……レミィは……」 「妹様用の童話を書くことと、館内に貸し出し文庫を作ることで取引したそうです。お嬢様も〇〇さんのお話気に入ってくれたみたいで、今度自分をモデルにして一つ短編を書いてみなさいって」 「あ、あの子用の童話、ね……」 屋敷から出ることが難しい吸血鬼の妹にとって、暇を潰せる童話というのは存外貴重かもしれない。たとえ自分で書かなくても、香霖堂などで〇〇が選んだ童話を用意するだけでも退屈しのぎにはなるだろう。 レミリアにしても同じことで、長い時間を生きる彼女たちには「暇つぶし」ほど貴重なものはない。 屋敷内に邸宅を建てれば、色々注文も付けやすいと踏んだのだろう。 「で、あなたはそこから毎日通いたいと」 「はい、この間〇〇さんに誘われまして」 もう少し恋人の期間を楽しんだら、今度は新婚ですよーと嬉しそうに翼を揺らす小悪魔。 二人揃っている訳でもないのに、場の空気は大層な糖度であった。 「ええと、同棲ってことでいいの?」 「同棲というか、同居ですね。まだキスまでしかしてませんし、もっと進んだことは、今の関係を楽しんでからにしようって二人で決めたんです」 寿命の長い恋人同士、のんびりと愛を育もうということなのか。 パチュリーにとって、小悪魔の緩みきった笑顔は何ともいえない危険な匂いを感じさせた。 これから延々と、この甘ったるい空気を吸わなくてはならないのかと戦慄した。 喘息が悪化するどころか、糖尿病になりかねない。 「分かったわ……そうしなさい」 そうパチュリーが決断したのは、ある意味英断だった。 これ以降二人は小悪魔の仕事場である図書館でイチャイチャすることはなかったものの、それ以外の場所では文句も言えないくらい清い交際のまま、大量の砂糖を量産することになる。 ただ手を繋いでいるだけなのに何故か空気が桜色。会話しているだけなのに空気が甘く変化。執筆している〇〇を小悪魔が見守っているだけなのに、第三者は見ているだけで恥ずかしい。といった具合である。 「あ、〇〇さんがクッキーお土産に持ってきてくれたんですよ。お茶の時間ですし、用意しますね」 「……ええ、ありがとう」 ふわふわと笑う小悪魔がお茶の準備のために席を外すと、パチュリーは机に突っ伏した。 「……甘」 苦い紅茶が恋しかった。 うーん、甘さが足りない。もっと甘くする方法はないものか…… 大図書館の片隅で その3(Megalith 2011/05/22) 妖怪の山の上空を、三つの影が行く。 ひとりは白狼天狗の犬走椛、ひとりは魔法使い〇〇、最後のひとりは〇〇の恋人兼司書の小悪魔だ。 「今日はありがとう、椛」 「いえいえ、山のお客様の案内とあれば、哨戒天狗としては晴れのお役目です。むしろ指名してもらったのが不思議なくらいです」 いや、文に頼むと色々訊かれそうでね。そう言って〇〇が頭を掻くと、椛はそれもそうかと納得してしまった。 新聞記者としてのサガか、最近同居を始めた恋人同士の旅行などという美味しい場面で文が黙っていられるはずもない。 「一応はじめの方は監視が付きますけど、変なことしなければすぐに引き上げる予定ですので」 恋人同士の旅行を監視する事自体、あまり感心できるものではない。 ただ、山の秩序を維持するためには必要だと判断されたようだ。最初の方だけというのは、二人の身元が明確で、その目的もはっきりしているからだろう。 無論、実際に監視が解けるかどうかは、山の考え次第なのだが。 「十分だよ、本当にありがとう」 「ありがとうございます、椛さん」 「あっはは、いえいえ……」 椛は手を繋いで空を飛ぶ二人の様子に、たらりと冷や汗を流した。 初々しく、微笑ましいのだが、何とも身体が痒くなる光景だ。 「あ、見えてきましたよ」 二人の周囲に形成された甘ったるい空間から逃げ出すように、椛は先行して地上へと降りていく。 その後に続いた二人は、椛が手を振っている場所に降り立った。 「はあ、すごいですね……」 小悪魔が目を輝かせて見上げる先には、太陽の光を反射して輝く滝の姿。 この旅行に合わせて〇〇が手に入れてきた白いワンピースを翻し、小悪魔が滝に近づいていく。 「〇〇さーん、すごい音ですー!」 ごうごうという水の落下する音は、小悪魔の声を幾分か遮っている。しかし彼女の楽しそうな表情を見てみれば、何を言っているのか大凡の見当はついた。 「楽しそうだなぁ、良かった良かった」 「そうですね。気に入っていただけて良かったです」 手を振る小悪魔に応える〇〇。その隣でほっとしたように溜息を漏らし、椛は微笑んだ。 「一応、滞在は今日の夕刻までというお話でしたが」 「うん、私も彼女も仕事があるからね。日帰りという形にしたんだ」 〇〇の言葉に、椛は少しだけ意外そうな顔を見せた。 この二人のイチャつき振りは妖怪の山にも伝わっており、もしかしたら一泊していくかもしれないと山の方でも考えていたのだ。 「お弁当を持ってどこかに出掛けるだけでも十分楽しいからね。こぁの作るお弁当が楽しみで、昨日は寝られなかったよ」 ははは、と笑う〇〇の様子に、椛は全身が痒くなった。 これ以上ここにいたら、砂糖を吐きそうだ。 「では、夕刻になりましたらお迎えに上がります」 「分かった、よろしく」 「はい」 椛は小悪魔に手を振りながら、その場を飛び去った。 その表情が少しほっとしていたのは、おそらく気のせいではないだろう。 「こぁ、あまり近付くと水しぶきで濡れてしまう」 「大丈夫ですよ、濡れたってそう簡単に風邪を引いたりしませんから」 滝壺の上をぐるぐると回りながら、小悪魔が笑う。 〇〇はその様子に苦笑しながら、今自分が見ている場面を記録に残そうと手帳を取り出した。 「あ、お魚がいますよ!」 「釣具は持ってきてないんだ、魚も山の資源だからね」 「あ、それもそうですね」 川の中を泳ぐ魚を追い掛けながら、小悪魔は納得したように頷いた。 妖怪の山を管理している天狗たちに許可を得ない限り、そこで魚や山菜を取ることは出来ない。 人里の人間たちが山の外縁すれすれで少し手に入れるくらいなら問題はないだろうが、一応紅魔館の関係者である二人が妖怪の山で好き勝手な行動を取ることは出来ない。 「ほら、虹ですよ!」 小悪魔がそう言い、滝壺の上に掛かった虹を指し示す。 〇〇はその虹と小悪魔を一つの絵として捉え、感嘆の溜息を漏らした。 「綺麗だ」 「ええ、本当に綺麗です」 小悪魔は〇〇の本心に気付かないまま、うっとりとした表情で虹を見上げる。 〇〇はそんな小悪魔の姿に釘付けになり、万年筆を動かす手はピクリとも動かない。 「〇〇さん?」 ふわりと自分の目の前に小悪魔が降りてきても、〇〇はその顔を見てじっと黙り込んだままだ。 不思議そうに首をかしげた小悪魔が〇〇の顔に手を伸ばすと、その腕が少し強い力で捕らえられた。 「ま、〇〇さん?」 「あ、ごめん」 〇〇は小悪魔に謝ったが、掴んだ手はそのままだ。 困惑する小悪魔を余所に、〇〇はその身体をぐいと引き寄せた。 「あ、あの……」 「……綺麗だったから、捕まえてみたくなった」 「え?」 〇〇の言葉に、小悪魔の動きが止まる。 短い言葉の中に、万感の思いが込められていた。 「こぁを捕まえていたい、本気でそう思った」 「〇〇さん……」 小悪魔が怖ず怖ずと〇〇の背中に手を伸ばす。 すると、彼女を捕まえている〇〇の腕が、さらに強くその身体を抱き締めた。 「独占欲かな」 「だったら、嬉しいです」 「そうかい?」 「ええ、だって〇〇さんもわたしと同じ気持ちだったってことですから」 小悪魔の嬉しそうな声に、〇〇は少しだけ力を抜いた。強く抱き締めていなくても、小悪魔は逃げ出したりしない。 「ずっと一緒だといいなぁ」 「はい、ずっと一緒だといいですね」 そう口に出しつつも、二人はお互いの居ない未来など考えられなかった。 それは希望というよりも欲望に近いものだったが、二人はそれを「幸せ」だと思っていた。 勢い以外の甘さを目指してみた。だが、まだまだ技量不足だった。 大図書館の片隅で その4(Megalith 2011/05/23) パチュリーは自らの使い魔が休憩中に胸元から首飾りを取り出し、それを嬉しそうな表情で見つめていることに気付いた。 ごくごく簡素な意匠の首飾り。小さな無色の宝石とそれを支える台座で形作られたそれは、小さくも精緻な細工が施されている。 「小悪魔、それはどうしたの?」 魔力を感じないことから魔導具の類ではないのだろう。しかし、少なくとも自分は使い魔にこんな首飾りを与えた記憶はない。 となると、自ずと答えは明らかになるのだが、パチュリーとしては誰から贈られたものかよりも、何故贈られたかの方が気になった。最近使い魔とその恋人の記念日があったとは聞いていない。 「〇〇さんから頂いたんですよ、パチュリー様」 「それは分かるけど、何か記念日でもあったかしら?」 小悪魔の誕生日はまだ随分先で、付き合って何年何ヶ月という記念日でもない。 「違いますよ」 「じゃあ、どうしたの?」 何か小悪魔を怒らせるようなことでもして、その埋め合わせなのかとも思ったが、それにしては贈られた側の機嫌が良すぎる。 「うーん、わたしもよく分からないんですけど、〇〇さんのお母様が……」 「え!? あなた〇〇のご両親と会ったの?」 「違いますよー、〇〇さんのお母様が昔お父様に貰ったものらしいです。好きな人が出来たら渡しなさいって言われてたみたいで、昨日寝る前に頂きました」 昨日整理した荷物の中から出てきたそうです。そんな小悪魔の言葉にパチュリーは何とも言えない表情になった。 理由としては納得できないものではないが、それなら何かの記念日に渡す方が良いのではないだろうか。 そもそも記念日というのものはそれ自体が魔力を持っている。その日に最適な行動を取ることで運命が拓けたり、幸運を招き寄せることが出来る。 〇〇は魔法使いとしては未熟だが、それくらいの知識はある筈だ。 「〇〇も、もう少し色々考える癖をつけた方がいいかもしれないわね」 「あはは、本人も同じようなこと言ってました。自分はどうにも考えが浅いって」 「……自覚があるなら、もう少し努力すればいいのに」 パチュリーは溜息を吐き、抱えた本の頁を捲る。 「〇〇さんですから」 それで総ては問題ない、というような小悪魔の表情に、パチュリーは思わず目付きが怪しくなる。 恋は盲目と言うが、余りにも恋人を好意的に見過ぎてはいないだろうか。 〇〇は小悪魔を大事にしているが、傍目からは少し自分の時間に重きを置き過ぎている。物語を書くことは〇〇の生きる目的であるからとやかく言うつもりはないが、もう少し小悪魔との時間を作るべきではないか。 「ねえ小悪魔、〇〇とはどんなことをして過ごしているの?」 「何ですか、パチュリー様も誰か好きな人が出来たんですか」 「そうじゃないわ、そもそも〇〇以外にこの図書館に来る男なんて、香霖堂の店主くらいなものよ」 「それもそうですね、でも、どんなことと言われても……」 一緒に朝御飯を食べ、小悪魔が図書館に出勤すれば〇〇も仕事を始め、小悪魔が帰宅すれば〇〇と一緒に夕食の準備、夕食が終われば晩酌という日もあるが、基本的には〇〇の書いた原稿を読んで感想を伝え、一緒に入浴して眠る。 「それだけですよー?」 「……ちょっと待ちなさい、お風呂って一緒に入っているの?」 ぴ、と手を挙げ、パチュリーが確認する。 小悪魔が、小首を傾げた。 「え? 恋人ってそういうものじゃないんですか?」 「違うとも言い切れないけど、そういう如何わしいことはまだしないんじゃないの?」 「如何わしいことなんてしてませんよ、背中流し合いっこしてるだけです。それに、お風呂は一度に入った方が使う燃料が少なくて済むんですよ」 主婦の知恵です、と形の良い胸を張る小悪魔。 最近香霖堂で主婦の強い味方な雑誌を買い集めているらしい。 「おいしい料理とか、裁縫のやり方とか、お庭の手入れの仕方とか、咲夜さんとか冥界の庭師さんとかに色々教えてもらってます」 家計簿までしっかりとつけている小悪魔。いつの間にか主婦技能が向上している。 「〇〇さんも喜んでくれますし、何よりも一緒に暮らしてるって感じがして楽しいです」 小悪魔がにこにこしながら今日の献立と書かれた紙をパチュリーに示す。 今晩は和食だった。 「〇〇さんも人里で良い夫婦関係とは何かを訊いて回っているって、この間慧音さんが教えてくれました」 仲が良くて結構なことだ、と苦笑しながらではあったが。 「なんていうか、本人よりも、周りの人が〇〇さんの気持ちを教えてくれるんです」 〇〇が何を思っているのか、何をしているのか、小悪魔をどれだけ大切に思っているのか、本人が時折物語という形で伝えるそれを、小悪魔は日々の生活の中で感じている。 「人里に買い物に行ったら、お店の人がわたしの好物を知ってるんです。〇〇さんがすごく優しい顔で『これ、こぁが好きなんです』って言うから、店の人も憶えてくれてたみたいで」 ふわりと笑い、小悪魔は首飾りを両手で包み込んだ。 「言葉じゃなくて、他のもので想いが伝わるって嬉しいことですよね」 小悪魔も、料理や裁縫、庭で育てている花に〇〇への想いを預けている。 「〇〇さんはあまり言葉数が多い人じゃないですけど、わたしはそんな〇〇さんが好きです」 「そう……」 パチュリーは、小悪魔の様子に深々と息を漏らした。 何とも幸せそうで、見ているだけで笑みが浮かんでくる。 「じゃあ今度、小悪魔が〇〇を好きだって言ってたこと、伝えなくちゃね」 「えー、それはちょっと恥ずかしいです」 「一緒にお風呂入ってるのに、恥ずかしいもないでしょう」 「それとこれとは違いますー」 照れたように頬を染めた小悪魔をいなしながら、パチュリーは自分ももう少し勉強した方がいいかもしれないと思った。 人と人の繋がりは、どうやらどれだけ分厚い辞書でも説明しきれないようだ。 どうやら自分は、パチュリーと小悪魔のコンビが好きらしい。
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小悪魔 HP1 AP1 DP2 MP1 コストなし 種族 悪魔 召喚時、自分のデッキの上から4枚を確認し、好きな順番に並び変えて良い。 出典 東方project
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基本スペック 基本能力値 考察 基本スペック 名前 小悪魔 異名 中ボス 種族 魔人族 雇用種族 魔人 雇用クラス 魔人系 特殊雇用 パチュリー・ノーレッジ 初期勢力 紅魔館 初期レベル 7 初期スキル キュアオール、魔人剣、ダークネスE、マジック、レジスト、マジックリカバー 固有スキル めーりん召喚、ちるの召喚、さなえ召喚、ちぇん召喚 リーダースキル 闇耐性UP 必殺スキル なし 取得スキル 基本能力値 基本能力値 HP 1500 MP 100 攻撃 70 防御 40 魔力 70 魔抵抗 40 素早さ 80 技術 60 HP回復 5 MP回復 10 移動 180 移動タイプ 魔界 exp_mul 125 召喚可 8 耐性 火 水 土 風 霊 光 闇 弾幕 毒 麻痺 幻覚 混乱 沈黙 石化 恐慌 吸血 魔吸 ドレイン 即死 パワフル 洗練 強い 強い 微弱 微弱 弱い 弱い 弱い 弱い 強い (空白は強くも弱くもない・普通) 限界突破 限界突破1: 限界突破2: 限界突破3: 考察 名前 コメント すべてのコメントを見る 基本能力値が低い。部下の魔人に攻撃力と魔力が負けているほど。近接系に強いわけでもなく、魔法戦に強いわけでもなく、肝心の召喚も召喚レベルが25%なので微妙。キュアオール、マジック、レジスト、マジックリカバーで後方支援するぐらいしか・・・ -- (ざっくり) 2012-03-05 14 47 57 前半も後半も剣でレベルアップ!これしかないッ! -- (ゆゆっくり) 2011-11-18 20 31 57
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信仰+ コスト 戦闘力 HP df 労働 知識 探索 特殊能力 0 0 2000 100 10 7 7 7 パチュリーサポート お引きユニット 攻撃 スペルカード名 攻撃対象 ダメージ量 ダメージ発生回数 弱 通常弾幕 全体 戦闘力×0.2 1回 中 通常弾幕 全体 戦闘力×0.25 1回 強 見様見真似「アグニシャイン」 全体 戦闘力×0.3 1回 関連霊撃 無し 関連アーティファクト カード名 コスト 効果 不夜城紅魔館 50万 戦闘開始フェイズスキップ 満月の時計塔 50万 カリスマ(弱) 絆 絆名称 組み合わせ 効果 リモート可否※ パチュこあは聖典 パチュ×小悪魔 修行時の霊力生産+ 小悪魔戦闘力同期 ※○:問題なく成立し効果発動 △:成立はするが一部効果は使えない ×:成立するが効果は使えない -:成立しない 特別な入手法 無し
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小悪魔6 5スレ目 775 「あ~ぁ。司書の仕事も楽じゃねぇなぁ……パチュリーもどこにいるものやら」 片方の手に紅茶セットの入ったバスケットを持ち、だだっぴろい図書館の中をパチュリーを探す。 紅茶持ってきてやったのにそんなときに限っていつもの場所にいないとは猫度アップだな。 しかし果たしてパチュリーは猫だろうか? 猫耳だけではきついな。眼鏡を足せば……うむ! 合格だ! じゃあ小悪魔に猫耳は……いや、悪魔羽と猫耳は共存しないなやはりそのままの君でいて などと自分でもよく分からない妄想を垂れ流したまま広大な図書館を彷徨い歩く。 今日も平和だ。 主に俺の頭が。 やっと見つけたパチュリーは、図書館の端にある小さな部屋にいた。 部屋と言ってもたいした大きさではなく、ちょっとした調理が出来る台所と言った感じの部屋である。 薬か何かを作っているらしく、かまどに火が焚かれている。 そのおかげで薄寒く暗い図書館もこの部屋だけ紅明るく、ほのかに暖かい。 火にくべられてくつくつと煮える中華鍋の中からは、おそらく薬草か何かだろう、不思議な匂いが漂う。 ……って、中華鍋? 中華鍋って、主に炒め物に使う道具じゃなかったろうか。 そもそも製薬中の魔女と言って中華鍋に向かう魔女を思い描く者はおるまい。 肉体言語魔法少女並に何か間違ってる。 「なに」 こちらの気配に気づいていたのだろう、背中越しに声をかけられる。 「魔女と中華鍋というミスマッチ具合が実にパチュリーらしいな」 ひとまず思ったことを口にするとぴたりと手が止まり、 いつもよりわずかに目を大きくして、しかしいつも通りめんどくさそうに振り返った。 「あら。あなただったの」 誰だと思ったのやら。 「てっきり小悪魔だと思ったわ。今気づいたけど、あなた達、色がよく似てるのね」 色? なんだそりゃ。 「五味はね、五行に繋がっているの。 五味を統べるとも言える中華鍋は、七曜の魔女である私に最も似合っている調理道具だと思わない?」 「思わない」 あ、むくれた。即答しすぎたか。 いつも以上に不満憤懣たるやといったジト目で見られるが気にしない。 「悪いが俺は製薬理論を聴きに来たんじゃなく、紅茶を持ってきただけなんだ。ほれ、飲もうぜ」 テーブルにポットと三つカップを並べて紅茶を注ぎ、勝手に自分のを飲み始める。 パチュリーは仏頂面で頬を膨らませたまま、鍋に蓋をしてぺたぺたと近寄ってきた。 「カップ、一つ多いんだけど」 「ん。んん、あー。小悪魔も誘ったんでな。後で来るとさ」 「ふーん、そう」 ごくなにげない調子でパチュリーは続けた。 「あなた、あの子のこと好きよね」 「んぐっっ! げふっ、げほっ、えほっ………えへんえへん。ん゛ん゛っ、ん゛っ。 フッ……何を言い出すかと思えば」 「紅茶噴いた顔でかっこつけ直しても遅いわよ、ほら、良いからちょっと耳貸しなさい」 顔を近づけあってぼそぼそと声をひそめる。 「(なぜ気が付いたッ!? 他人の色恋沙汰に気づけないほどは鈍感だと思っていたのにッッ)」 「(五月蝿いわね。咲夜から聞いたの。 紅魔館のメイド長は世界一ィィィィィィィィィ! 知らん事などナァァァァァァァァイ! だそうよ)」 「(市はr……あー……うん、ごめん。謎の敗北感と共にすごい納得した)」 「(って、そんなことはどうでもいいわ。あなた、今のままで良いの? さっさとくっついちゃいなさいよ?)」 「(簡単に言ってくれるのな……そりゃ俺だって是非そうしたいが)」 「(私が近いうちにセッティングしてあげるから、そこで……! というのはどう?)」 「(マテマテマテ、そもそもなんでそんなに積極的なんだよ)」 「(楽しいから。)」 うむ。新しいおもちゃを目にした子供のような、実に期待に満ちた楽しそうな表情だ。腹立つほど。 「はぁ。それにしても意外だな。本にしか興味がないと思ってたのに」 「そうだったんだけどね。私も色々変わってきたのよ。主に人間の所為で」 妖怪は人間に比べて寿命が長く、それゆえ変わりにくい。 しかし、人間――魔理沙だとか、咲夜さんだとか、俺だとか――と接するようになったことで、変わってきた。 そういうことらしい。 確かに『楽しいから』なんて俺や魔理沙が言いそうなセリフである。光栄な話だ。 「あなたのことは……性格はかなり変だけど、買っているわ。 あなたも、同じくらい本を愛してくれている。 そして本と同じくらいお互いに好意を持っている。 だから。あなたは二人で幸せになる義務があるわ」 そう言ってぬるくなりはじめた紅茶を啜る。 「……そこまで思われてたとは、心強い話だ。 ご期待に添えるよう、努力する。やってみるぜ」 全く。 全く、実に心強い話だ。 さらにしばらくして、やっと小悪魔は来た。 「すみません、遅くなりました~、って、あれ? なんだか焦げ臭くないですか」 「「あ」」 パチュリーの製薬成功率がまた下がった。 BadEnd 01、火にかけた鍋からは離れないようにしよう! 予定外の精製失敗のおかげで、パチュリーは早くも“セッティング”をその日の午後にもってきた。 俺と小悪魔に薬草の収集を命じ、魔法の森の近くにある花畑に向かわせたのだ。 ぽかぽかと陽気が漂う昼下がり。 それは、まぁ、確かに一日中カビ臭い薄暗い図書館にいては一生得られそうにない絶好のシチュエーションだった。 ああ、それにしても今日はいい天気だなぁ……やっぱ小悪魔綺麗だよなぁ…… 何もかもが美しい、天使のような小悪魔。 瑪瑙のように煌めく瞳、柔らかそうにふくらんだ唇、 落ち着きと知性を漂わせる表情、ぱたぱたと動く羽。 しかし何と言っても少しウェーブのかかった、ふわっふわの紅く煌めく長い髪が素晴らしい。 こんな日に、踊るように花を摘む小悪魔に見とれないヤツなんているわけがないね。 そして事実俺は自分が摘むべき草も忘れて小悪魔に魅入られていた。 直前にパチュリーにつつかれていた所為も、場所のおかげもあったかもしれない。 けれどそんな綺麗な横顔を見ていると、俺の気持ちはごく自然に口をついて出ていた。 日々寝る前に顔から鳳翼天翔するくらいキザなセリフを練習していたのが嘘のようだった。 「小悪魔」 「はい?」 「好きだ。愛してる」 「はい。ありがt……ぇ? はれ? ほぁぇぇっ??」 元から大きめな瞳がさらに大きく見開かれ、頭と背中の羽も尻尾もピン!と直立し、 両手を口元に当てて驚いたままの表情で固まってしまった。 そしておずおずと両手を胸元あたりに降ろすと、うつむきかげんで視線を彷徨わせ始めた。 「あれ? ぇっと、本気…です、か? あ、ごめんなさい変なこと聞いちゃって。失礼ですよね」 「突然だったことは謝る、ごめん。でも、もちろん本気で言ってる」 ぱたぱた、ぶんぶんぶん 「そっかー、そですか……」 「うん」 ぱたぱたぱたぱた、ぶんぶんぶんぶんぶんぶん 「うーんと、えーっと、ぅーん……?」 音がするほどのあの尻尾と羽の振り様、顔の赤らみようなどから言って、小悪魔は喜んでくれていた。 誰より小悪魔を愛している俺が言うんだ間違いない。 しかし、同時に怒っているようにも見えたし、悲しんでいるようにも見えた。 しばらくそんな難しい顔をしたあと小悪魔が絞り出した答えは。 「あの……ごめんなさい、返事は……しばらく待ってもらってもよろしいですか?」 「おかえり、って……えーと……」 俺の渋い表情を見て良い結果でなかったことは悟ったのか、パチュリーが開きかけた口を噤む。 「まだわかんないけど…保留だってさ。どうかな、ダメなのかな」 パチュリーは眉間にしわを寄せて、何か言おうと口を開いては何も出てこずに口をへの字に曲げることを何度か繰り返した後、一言だけ、ありえないわ、と呟いた。 どうにも合点のいかない小悪魔の対応を訝しみながら、その日は足早に自分の部屋へと引き籠もった。 3日経った。 何も変わらなかった。 1週間経った。 何も変わらなかった。 10日経った。 何も変わらなかった。そう、何も変わらなかった。 毎日顔を合わせているが、何事もなかったかの様に接してくる小悪魔に覚えた感情は、苛立ちだったか、哀しさだったか、それとも感謝だったろうか。 そんなある日のこと。 いつものように図書の整理をしていた俺は、ぼーっとしていてうっかり、 「痛っ!」 「どうしたの?」 「本の金具で指切ったみたいだ。おーいてぇ」 血ぃ出てきたー、とぼやきながら切れた人差し指をパチュリーに見せる。 するとパチュリーは、 「あら、大丈夫? 痛くない?」 「ああ、ま、これくらないなら舐めてりゃ治るかな」 「ええっ!? あ、ああ、貴方が舐めるのね」 「おいおい、なんだと思ったんだ」 「な、なんでもないっ! なんでもないのっ!」 ツンと怒ったように顔を赤くして言うと、読んでいた本に顔を隠すかのように、ばっとうずめた。 と、 「あら何でもないんですか? 残念ですぅ」 「うおっ、小悪魔!? どっから現れた?」 いきなり背後から声をかけられびっくりする。この辺はさすがに紅魔館にいるだけあって神出鬼没だ。 後ろから肩口を覗きこむように抱きつかれ、ケガした指を両手で包み込んでくれる。 こんなに距離が近づいたのは実は初めてかもしれない。 というかなんかふっくらと当たってる。当てられてるのか! ……いやいやその前に。何がしたいんだ小悪魔。泣くぞ俺。 「ふふっ、パチュリー様がやらないのでしたら私が代わりにやっちゃいますよ?」 ……小悪魔? 「別に良いわよ」 「あら残ね……」 けらけらとまんま小悪魔の様な笑いを上げかけて――あれ? とそのままの表情で固まった。 「あの。今なんておっしゃいました?」 「ダメって聞こえたかしら? 好きにしたら?」 「…………あれあれ? いいんですかパチュリー様? そんなこと言って。 もらっちゃいますよ、○○さん」 「良いわよ。それで満足したら早く仕事に帰ってちょうだい」 「…………」 「MPが足りなかったかしら」 「いえ、あの。えと、ホントに良いんですか? 何があったか知りませんが些細なことで喧嘩しちゃダメですよ? 後になってから『やっぱり○○のこと好きだったの』とか言ってももう譲りませんよ?」 「……?」 「あなた、何言ってるの?」 パチュリーが俺と顔を見合わせて不思議そうに首をかしげる。 「いや、だから…あれ? あの、パチュリー様。好きだったんじゃないんですか? ○○さん」 そんなことは初耳も良いところなんだが……そして謎はほぼ解けた。 パチュリーはパチュリーで、ふふぅん、と小馬鹿にしたような呆れ顔を浮かべて小悪魔を見やる。 「あなた何十年私の下で働いてるの? 私が本の知識以上に心惹かれるものなんかあると思って?」 いや、ありがたいことに本の知識以上には俺達のことは気にしてくれていたような気もするが。 「ほぇ……あ……れ……あの日だったか…パチュリー様告白してたじゃないですか……。 そう、私、厨房のそばで聞いてたんですよ?」 「?? 何のこと?」 「そんなこと悪魔に誓って無かったわ」 「ありましたよ! だから私は告白してもらって嬉しかったけど、 それ以上に○○さんが二股かけるような人だと思ってすごく残念だったんですよ!」 パチュリーと二人で難しい顔をして記憶の糸をたぐり寄せる。……ん~? 「あっ。ねぇ、○○。そう言えば小部屋に二人でいたとき……」 「あー。ああ、なんだっけ。たしかに告白した時のセリフとも聞こえる会話だったような」 あ、小悪魔が真っ白になって、みょん侍のように半分魂が抜け出てる。 耳を澄ますとエクトプラズムと共に こ あ ぁ ぁ ぁ ぁ、とかいう苦悶の音をはき出している。 呆然とする小悪魔を尻目に、事件解決ね、後は任せたわ、と言ってパチュリーはすぅっと図書館から出て行こうとする。 その背中に向けて、慌てて小悪魔が我を取り戻して声をかける。 「ちょ、あの! ホントにホントに良いんですね!? 私の勘違いだったことは50歩くらい譲って認めますけど、 もっと後になってから『ホントは○○のこと好きだったの』とか言ってももう譲りませんよ!」 「それさっきも言ったわよ。好きになさい」 と、扉を開けたところでパチュリーが肩越しに振り返って口を開く。 「小悪魔。細かいことは言わないわ。今ここに、たった一つだけ私と契約しなさい。 ――幸せになること。」 「え、あ、は、はい。はいっ! 絶対幸せになります! ありがとうございます!」 それを聞いて満足そうに笑みを浮かべたパチュリーは、今度こそ扉の外へと姿を消した。 ばっ、と弾かれた様に俺に向き直る。 胸の前で手を組んで、眼を潤ませて 「○○さん……ごめんなさい、勝手に勘違いして、怒って、返事もせずにすみませんでした。 今からでも許してもらえるなら、言います。好きです……。私も、好きです! 貴方を愛してます!」 その言葉を、その気持ちを。幾星霜待ち続けていただろうか。 「小悪魔っ…!」 ぎゅっと、抱きしめる。 もう離さない。ずっと、側にいてくれ。そう耳元で囁くと、胸の中でしっかり、はい、と返事をしてくれた。 「私、私……ごめんなさい……」 そう言ってすすり泣く。 涙は似合わない、そう言おうと思って頬の涙を掬った指をふっとさらわれ。 気が付くと俺の指は――好きな人の口の中に吸い込まれていた。 「んっ……ちゅ……れろ…」 「こっっっっこここここここあっくま?」 わたわたと焦る俺の指がぬるりと解放され、つぅと糸を引く。 「血が出ていました、舐めていれば治りますよね」 えへへ、と目尻を赤くしたまま悪戯っぽく笑って、再び指をちゅっと吸い込む。 吸われている部分からぞくぞくとした快感が伝播してくる。 「う、ぁ……」 くすぐったさと恥ずかしさに思わず、手首を握っていた小悪魔の手を取り、同じようにその人差し指に吸い付く。 「ふ、ぁ……ぅん……」 少し驚いて指を一瞬口から離した小悪魔だったが、すぐにとろけるような表情に戻り、指を舐め合う。 ほっそりと白く長い小悪魔の指は、少しだけ本の黴くさい匂いがしたが、ほんのりと甘かった。 口の中で時たまぴくぴくと蠢くものから温もりを受け取り、温もりを与える。 とろとろと熔けそうになる指先からは甘い波が伝わり続け、じんじんと意識までも融かしてゆく。 いつしか、どちらが誘ったか。 お互いの手と手が少しずつ近づいてゆき、自然、ふっと微かに唇が触れ合って――すぐに離れる。 「え、えへへへへへへへへへへへへへへへ」 顔を真っ赤に染め上げてはにかむ俺の恋人。 でも、自分も同じくらい顔が紅く火照って頬がゆるんでいるのを感じる。 お互い恥ずかしくって、二人照れあって、一緒に何か言わなきゃ、と思ってわたわたして。 そして、二人とも同じくらい間抜けなことをしていることに気付いて、ぷっ、と同時に吹き出す。 「「あはははははははははっっ」」 二人でいられる。二人で想っている。二人で感じ合っている。 そんな些細なこと、されどそんな奇跡が幸せで、笑いが止まらない。 ひとしきり笑いあって落ち着いたころ、小悪魔に惚れてからこのかた、長い間夢だった願いを口にする。 「ねぇ。小悪魔。笑ってほしい。ずっとずっと、こうして俺の隣で笑っていてほしい。 俺のためだけに笑っていてほしい。 君の太陽の様な笑顔が、大好きなんだ」 「はい……はい! ずっと、ずっと貴方の傍にいさせて下さい。そうすれば、私は貴方のおかげでずっと笑顔でいられます」 夕立のあとに輝く太陽のように晴れやかな笑顔で応えてくれる。 俺だけに向けられている、向日葵のような笑顔。 もう二度とその笑顔を離さないよう、ぎゅっと強く抱きしめる。 ――ああ、俺は、小悪魔を好きになって、心底良かった。 「あぁ、もったいない。行動に多少問題はあったけど優秀だった司書を、一気に二人も解雇しちゃったわ」 「あいつら勝手に住み着いただけで、元から雇ってないし解雇してもいないじゃん? それに、大丈夫よ。 すぐ三人に増えるわ。ああ、もっと増えるかもね。きっと賑やかになるわ」 「――そう。レミィが言うのならきっとそうなのね」 咲夜が来て、レミィは変わった。 霊夢が来て、レミィはまた変わった 魔理沙が来て、妹様は変わった。私も変わった。 ○○が来て、あの子は変わった。 人間が来るたび、新しい風が吹き込み、紅魔館は変わっていく。 今度来る人間は、きっと悪魔と人間のハーフ。多分。 そして、また新しい風が生まれ、何かが変わっていくのだろう。 この世に生を受けて、はや1世紀が経つパチュリー。 こんなにもめまぐるしく変わってゆく世界は初めての経験だった。 人間という種族からは、どんな本から得る知識も敵わない量の生きた知識を得ることが出来る。 そのことに気付かせてくれた人間達に感謝しつつ、パチュリーは、 その知識を得られることを思って、早くも期待に胸を躍らせるのだった。 7スレ目913 本棚を見上げる。天井は薄暗くて見えない程、遠い。 壁が本で造られていると言える程、本棚が列を成している。上を見れば崖と思わせ、左 右を見れば迷宮と惑わせ、下を見れば整理されていない海。全ての角度から見ようと、全 てが本。活字嫌いが幽閉されようものなら、数時間で精神障害を起こすのではないかと危 惧さえしてしまう。 と、感慨深く思った所で……要するに片付いてないだけ。 「えっとこの本は……うげ。これ南西端側の棚じゃないか。なんでここまで持ってくる必 要があるんだ」 図書館内といっても、今自分がいる位置から該当する本棚へはかなりの距離がある。そ のぐらいこの"仕事場"は広大すぎる。歩いて何分かかるだろうか。 付近に放置されていた書籍類の本棚は見事にバラバラで、東奔西走南船北馬と口に言え ば軽いが、距離を換算したら気が滅入る結果になる。 しかし、雇われてしっかり図書館の主から貰う物貰ってる以上、やらざるを得ない。主 人曰く、ぎぶあんどてーくの精神らしい。 とはいっても、支給元は紅魔館当主からなのだが。 「さて、どこから突っ込んでいくかな」 回収した本の基本位置情報を一つ一つ脳内の図書館見取り図と照らし合わせ、ルートを 弾き出す。だが、結局行って帰っての応酬で時間短縮は見込めそうにない。 「……はぁ」 無意識に重い息が出た。そんな自分に気分が苦くなったが、耳に入って来た小さな声が 苦味をかき消した。 柔らかに笑う、音。 「お疲れのようですね」 「それなりに、かな」 踵を返し、空中を漂う主人の従者に答える。俺に微笑みかけるその優しい表情は、大人 の色香を持ってはいるが、案外茶目っ気があったりドジ踏んだりおっちょこちょいだった りして、保護欲をかきたてられてしまう。"リトル"という名も、性格から鑑みて頷けるい い名前に思えた。 「私の作業は終わりましたから、遠くの本は持って行きます」 両手を差し出して本を受け取ろうとするリトルに、「大丈夫」と俺は軽く手を振って否 定の意を表した。 「構わず休んでてくれ、主人と茶でも飲みながらさ。後で行くから」 「ダメですよっ」 振っていた手をガシッと両手で握られ、リトルの真剣な眼差しにたじろぐ。 「休憩ぐらいご一緒しましょうよ。それに……パチュリー様は今し方気分が優れないとお 部屋に戻られました。私一人で寂しく紅茶を啜れと仰いますか……?」 「言ってない、そこまで言ってないから」 真剣かと思えば、瞳を潤ませ上目遣いで懇願されると、さすがに意思が折れる。ここま でされて拒否を続けられる程、サディズムなんてない。 しかし、ずるい業だ。理解していようとも、従ってしまう。 「でしたら、お手伝いさせて下さい」 「む……そこまで言うなら。これと、これが南西方面なんだ。悪いけど、頼めるか?」 「はい、お任せ下さい。ぱぱーっと片付けてきますからっ」 嬉々として本を受け取り、颯爽と飛んでいく。そんな姿が好ましく、重労働である図書 館の作業も続けられるというもの。 確かに、我が雇い主も妖艶かつ蟲惑的な空気を持ちつつ容姿は少女というなんともミス マッチなお方だが。両手に華なんてお門違いもいい所だが、恵まれてると実感する。 最近、というより数ヶ月も好調のようだった主人が急に体調不良とは少々驚いた。加え て妙に元気というか気合の入ったリトルの姿にも違和感があるのだが。 とかく、後々主人の見舞いでもさせてもらおう。 「よし、さっさと終わらせよう」 拳に力を入れ、数冊の本を抱えて歩き出す。本来あるべき地へ納める為に── 「先ほどの終わりました。次はどこのでしょうか」 「──速すぎだろ常識的に考えて」 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/谷・)_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_ /_/_/ 「アールグレイとジャワがご用意できますが、どちらがよろしいですか?」 「アールグレイ、お願いできる?」 リトルは笑って頷くと、茶葉の入ったポットに熱湯を注ぎ始めた。色々と工夫をしているみたいだが、詳しくはわからない。多分、本格的な淹れ方なのだろう。 数刻前は残骸の山に見て取れたテーブルの周囲も、今ではすっきり爽やかさんくm…… 失礼。綺麗に清掃されている。 「少々お待ち下さいね、もうすぐ良い香りになりますので。あ、よろしければ先にお茶菓 子をどうぞ。頑張って作ってみたんですよ」 「お、リトルが作ったのか。……ん? 見たことないな、コレ」 テーブルには、主人と三人で休憩を楽しむ際によく見るクッキーやドーナツの他に、全 く知識に存在しない細い棒の束があった。全体的に黒く、先端が白い。 「最近また、新しい雑誌が来まして。その中に書かれていました。ポッキーって言う名前 のお菓子です」 ぽっきー。確かに、見た目通り簡単に折れそうな名前だ。 「へぇ、ちょっと一本。……ぉ、チョコレートとビスケットってやつか」 「大体そのような感じですね」 リトルの作った新作に感嘆しつつ、淹れ立ての紅茶がテーブルに置かれた。 アールグレイは薫り高く、ドーナツはふっくらと、クッキーは芳ばしく、ポッキーの小 気味良い音が俺とリトルの雑談に花を添えてくれる。主人はおらず、本日の作業は全て終 わっている。止め処ない語りは、時間の流れを意識させなかった。 「それでまぁ、あれは臭いったらありゃしないよ本当に」 「ですよねぇ、臭いですよねぇ~」 一段落ついでに何かしら菓子を取ろうとして……手元がスカる。テーブルを見れば、あ るのはポッキリいくのが一本のみ。 「あ、悪い。結構食っちまったか」 「いえ、お構いなく。美味しく召し上がって頂けたようで、嬉しいです」 満面の笑みが目に焼きついて、急速に気分が高揚してくる。この笑顔で三倍飯だ。 彼女が魔族である事は知っている。ただ、魔族と思える節が全く見えない。笑顔で人を 救ってしまえるのではと思う程、魔族とかけ離れている。 「じゃあ、最後のこれはリトルが食べてくれ。俺は貰いすぎたよ」 「そうですか……? あの、でっ、でしたら、半分ずつにしましょう」 急に挙動がおかしくなった気がしたが、そのままリトルが手にしたポッキーが半分に割 れて渡されるのを待った。 が、折らずに咥え、テーブルから身体を乗り出してきた。 「ん?」 リトルが、ポッキーの先端を咥えたままお戯けた笑いを向けてくる。 「──へ?」 「ふふ、わかりませんか?」 唇で挟みながらも器用に喋るリトル。 意図がわからず、呆ける。しばらくして、ハッと脳内が鮮明になった。 ま、さ、か…… 「は、はんぶん?」 「はやくして下さいよ。私の方、濡れて折れちゃいます」 目が細まり、からかいの意が伝わる。これを食べろ、と言いたいらしい。 一回だけ里で聞いた事がある。外来人が開いた集団お見合いみたいな集まりで、男女一 組で一本のうどんを互いに両端から食べて度胸試しみたいな事をしたと。 リトルもその意味を理解してやっている様子で、目や口元は『どうしたんですか? 食 べないんですか~?』と挑発しているが、頬は夕暮時を越える紅色。 つまり。俺は試されている。男としての度胸を試されている。と、思う。 「一応聞くけど……手で半分に折ったら?」 「怒ります。大弾を妖夢さんの未来永劫斬並の剛速球で投げます」 「イタダキマス」 とは言ったものの、緊張で身体が強張る。しかも、リトルは目を瞑ってる。しかし、躊 躇して時間を経てれば経てる程状況は宜しくなくなってしまう。 意識を高める。我は獣、目の前の糧を喰らうのみ。 ポッキーの半分を口に入れ、乾いた音が耳に届く。折れた合図に心で頷き── リトル側の半分がテーブルに落ちるのを最後まで見てしまった。 「……」 身体が止まる。頭も、首も、腕も、足も。四肢の骨が鉄の棒にすり換えられた。 逆に、内部は灼熱が迸る。鉄は炉で熱されたばかりの真紅に染まり、肉が煙を立てて焼 け焦げる。 どれほど接触していたか。柔らかく、肉厚な桃色のそれが自分から離れていった。呆然 とした俺の口から、折った棒が落ちて転がった。 「り、リトル? 今、俺に何をしたかわか──」 「わ、わかってますっ」 うつむいていて、表情は窺い知れない。きっと、鬼灯の赤だろう。きっと、俺も。 「おぉ、俺はうれしっ、いややや。別にいいけどさっ、い、いいのか、リトルは」 「……他の男の人とは、絶対しません」 脳天直撃。これは酷い、いや。これはやばい。 「あ、新しい茶葉取って来ますねっ」 言うが早いか、視界からリトルの姿が消えた。 「これは、これはいいのか? 本当に? ど、どうすんのよ! どうすんのよ俺ぇ!?」 明らかにリトルからの積極的な意思表示なのは分かっているが、脳内の整理がつかず、 眩暈に似た感覚に侵食される。驚きと、喜びと、欲が沸いて混じっては押し殺す。思考が 混沌に満ちている。 テーブルに頭を打ちつけ、痛みと時間で熱が収まるのを促そうとした。結果は、頭痛が 酷くなって額から血が滲み出てきただけだった。 「いでぇ……」 愚の骨頂って言葉は、今の自分に適しているかもしれない。 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/皿゚)_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_ /_/_/ 仕事は既に、終わっている。 自分の住居はここではない。独り身とはいえ、家はある。導き出される、次に取るべき 行動は、"帰路につく"こと。 「……」 「……」 図書館の出入口へ向かう、二人。俺の後ろを俯いたままついてくるリトル。少し振り向 いて、声を掛けようとして、喉がつまり……また歩く。 あれから、会話していない。俺もリトルも。何を話せばいいのかわからない。いや、違 う。リトルの顔を見てしまうと、あの映像が蘇り、全ての言葉が忘却の彼方、だ。 扉が見えた。外に出れば、この重さから解放される。そして同時に、何かが砕け、終わ るとも。 伝える必要があった。 「リトル」 「……はい」 仔猫を思わせる小さな声。背中を向けたまま彼女を見ずに、言を続ける。 「さっきは取り乱して悪かった」 「いえ、あの。私こそあんな、はしたない事をしまして……でも」 「ぁぁ、大丈夫。はしたないとか思ってないし、厭でもないし。寧ろ、踊りたくなる程こ う……なんつーか……あぁ!」 自分の気持ちが言葉にならず、頭を掻き毟る。自分の莫迦さに反吐が出る。 至る所、簡潔かつ直球なものしか選べなかった。 「嬉しかった。初、ってやつだったんだけどさ、俺。相手がリトルなら問題なし。もう癖 になって毎日一回はしてもらわないと気が済まなくなりそうだよハハハハハハッ!」 自分で言って、自分で身体を爆破させたい程、莫迦で下らない。乾いた笑い声が図書館 に響き、虚しさとして耳に戻ってくる。 背中にぶつかる音は、無い。今振り向けば、呆れ顔のリトルが見れるかもしれない。 扉の取っ手を掴み、「お大事にって、主人に伝えておいて」と捨て台詞。 開けば、"おわる"── ──おわらせていいわけ、ないだろう。 扉を開けたいと焦る逃亡の意。踏みとどまれと足を重くする打破の意。頭の中で白い小 人と黒い小人が言い争うなんて喩えがあるが、まさにそんな気分だ。 「ひとつ、聞いていいかな」 また、背中で語る。 「はい」 また、小さな声が背中に刺さる。 「さっきのキスって、俺だから、だよな。だとしたら……俺も同じ考えだ」 「……」 刺さらない。空虚が纏わりつく。 音もなく、腕を捕まれ身体が動かされた。 リトルの手が腕を掴み、自分の身体が半回転し終えた時には、俺達は密着していた。両 手を腰に絡めて離そうとせず、顔は胸元にうずくまっている。 「リトル……」 「あなた以外の方とは、したくないです」 腰を覆った腕の力が少し強くなった。俺の手も、軽くリトルの柔らかな髪を撫でると、 軽い喜びの音と共に身じろぎした。 「俺も、リトル以外は願い下げだ」 顔を上げたリトルと視線があい、笑う。互いの鼻先が触れ、息が二人の熱を共有する。 ただ、後悔はあった。 「しかし、情けないな俺も。自分から切り出すつもりが、リトルに言わせてしまうとは」 切り出す気があっても、逃げ腰だったのが現実。 「雑誌の受け売りですけど……女の子って、想いが強ければ強い程、男の人よりずっと大 きくなれるんですよ」 「確かに、今のリトルは俺の何倍も大きくみえるよ。いいのか? ヘタレな俺で」 わざとらしく、自分を謙らせて悪戯めいた笑いに頬が少し膨れる。ただ、その上目遣い はすぐに、惚けて潤み、蕩ける。 「私には……あなたしかいません。見えません。存在しません」 「ぅ……」 熱視線に気おされる。が、それが悪戯返しだとニヤけた表情に切り替わって理解した。 してやられたと、眉間に皺が寄る。 「そう言われたら、どうします?」 「押し倒して、今夜は寝させないぞ。まである」 「期待してます」 緊張感が無くなり、異常に負担をかけていた膝から力が抜ける。本棚に寄りかかって座 ると、リトルも俺に乗りかかる形で座った。優艶さ漂う吐息が、一寸先は俺の首と、暖か にくすぐってくる。 「私は……魔族です。正真正銘の悪魔です」 「知ってる」 知っているが、俺にとっては関係の無い事。魔族でも悪魔でも。 「でも、それ以前に女の子なんです」 「わかってる」 わかっているからこそ、種族なんて意識せず、俺は接してきた。 「女の子は、大好きな人の事を想うと──溶けちゃうんです。溶けて……大好きな人と同 じ色になっちゃうんです。わかって、頂けますか?」 「……俺の色はかなり酷いぞ。後悔するなよ」 「はい──」 顔を引き寄せ、今度は自分から押し付ける。リトルは拒まず、受け入れてくれた。微か に涙ぐんだ瞳で求めてくる目の前の女の子に激情をかられ、手が柔軟な肌の感触を欲し始 めて震えだす。 理性が本能に蝕まれていく。これが男の"さが"というものなのか── 首筋が、冷えた。とても、金属質な冷たさ。 「業務時間は過ぎました……が、何をしてるんでしょうか?」 紅魔館のメイド長がいた。 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/△ )_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 一ヶ月待った、と聞かされた。 俺もリトルも、互いに意識はしていたものの、主人の存在が壁になっていた。加えて持 病の喘息がここぞとばかりに表に出ず、好調だった。本来ならば喜ぶべき話だが、なんと も複雑な期間になってしまっていた。 更には、主人は俺の事を気に入ってくれていたようで、お陰で長期の図書館内業務を受 ける事ができた。そんな主人の俺に対する感情が、リトルにとっては焦燥感そのものだっ たらしい。そして主人の急な体調不良が引き金になった。なんとも、愛らしい話だ。 「──女性のいる前で、他の子を想い耽ってると嫌われるわよ?」 「むぉっ!? これは失礼しました」 館を、木々を、萌える若草を照らす太陽。涼しい風と穏やかな雲の流れ。外に足を向け るには絶好の日和。 「とりあえず、まだ準備に時間かかるようなので、ここで待ちます。メイド長はここにい て大丈夫なんですか?」 「あなた達二人を見送るのも仕事よ。一通りの人員管理も私の役目ですから」 紅魔館の正門前。外出を許されたリトルを待つ俺……と、メイド長。館の上層部が来て るとあってか、普段ボーっとしている門番も胸を張って仁王立ちしている。 「色々とやる事多くて大変ですね。お疲れ様です」 「そう思うなら、厄介事は増やさないでね」 笑顔だが、語気が強い。実直に頭を縦に振った。 「本来、職場恋愛は厳罰なんですから。お嬢様に毎日の感謝をお忘れなきよう」 「わかってますよ、命の恩人ですし」 「一言余計です」 「失礼」 メイド長に発見された後── 問答無用で蹴り飛ばされた俺は意識が吹っ飛び、そのまま無数のナイフに刺されて三途 の川に直行だったはずだが、リトルが本気で大弾投げて騒然となったらしい。翌日、俺の 意識が戻った後、メイド長に連行されて紅魔館当主から処罰を言い渡されたのだが、『そ の程度、目くじら立てる程ではないでしょう、好きになさい』と放任発言。さすがのメイ ド長も豆鉄砲を食らっていた。 そして、公にリトルの"お相手"として認められてはや数日。 図書館の主人は一向に調子が良くならず、今し方長い銀髪の女性が有名な薬剤師のもと へ連れて行くと、背負っていった。 俺とリトルも同行しようとしたのだが、『あんたら分の送迎が面倒だよ』と一蹴されて しまった。要するに、"ひま"が出てしまった。 「まぁ、たまの休みだから羽を延ばしていらっしゃい。お役目も忘れないようにね」 「了解しました」 当主直々から『お遊びついでに、リトルに館外の知識を見せて来なさい』と命令? を 受けて今に至る。『霧雨と博麗という女には近づかないように。いらぬ無駄知識しか増え ないわ。百害あって一利なし、よ』と釘も刺された。 大きく背伸びをして……見れば、はにかむ笑顔。 「お待たせしました。あの……変じゃ、ないですよね?」 「何言ってんだ。似合いすぎて言葉が見つからないぞ」 喜び、笑うリトル。外の眩しい日差しは、彼女の輝きと同化する。 黒き翼に純白のワンピース。白と黒のモノトーン調というのは、格好良くもあり、綺麗 でもあり、可愛くもある。語ろうとして語りきれるものではないだろう。 「行ってらっしゃい。道中、気をつけなさいよ」 「わかりました」 深々と頭を下げて一礼し、メイド長が館の奥へ消えていく。ここからは、二人の時間が 始まるんだと、手を差し伸べた。 「行こうか。丸々一日、遊び倒すぞ」 「はいっ」 勢い良く抱きついてきたリトルを回転しながら抱え上げ、大きく一歩を踏み出す。 遠くに見える木々が風でなびく。俺とリトルの出発に手を振って送ってくれた。 ──想うんだ、俺は。 黒い翼の天使がいてもいいんじゃないかと。なんつってな── 7スレ目 564 小悪魔「はい、これが私との契約書です♪」 ○○ 「おう。」 小悪魔「本当に?本当に私が主側の契約でいいの?」 ○○ 「君はすでにパチェの従者だ…君と絆を作るには、 俺が君の従者になるしかない。」 小悪魔「う、嬉しい…」 (にこ…) ○○ 「で、何処にサインすればいいんだ?」 小悪魔「サインではなく…○○さん自身の血で血判を押してください。 ココに…レミリア様の認可印がありますね、その脇です。」 ○○ 「ここだな。」 俺はこのとき、契約書をよく読みもせずに、指を軽く噛み、自分の血をにじませて、 小悪魔のいわれるがままに血判を押してしまう。 (ぺたっ) 小悪魔「できたー♪」 これでめでたく、俺と小悪魔の主従関係契約が成立…したはずなのだが… ○○ 「おかしいな…何も変わった感じしないぞ…」 小悪魔「はい、だってこれ婚姻届ですから♪」 ○○ 「ぶっ」 小悪魔「悪魔との契約に期限も解約もありませんからねっ!幸せにしてくださいね!」
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小悪魔 こあ ストック 1 ゲージ速度 普通 チャージ牌 一萬 発動タイミング 第一自摸時 手牌を山牌とランダムに3枚交換する 主な使用タイミング 手がとんでもなく悪い時に。 正直 書く事ないです。
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小悪魔 パチュリーのマネージャー 紅魔館大図書館の司書 特技・技紹介 なし 説明 パチュリーをはじめとした紅魔館全員のマネージャー的存在。 非常に礼儀正しい性格で、健康管理から必殺技の実験台まで甲斐甲斐しくこなす。 選手として出場する際は、ボム1個程度の活躍が期待できる。
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小悪魔 加入条件:ステージ開始時に加入 初期装備:きずぐすり 初期能力 Lv クラス HP 力 魔力 技 速さ 幸運 守備 魔防 移動 武器レベル 1 司祭 21 0 5 6 11 2 4 8 6 杖D 本D 成長率(%)【試行回数100回】 HP 力 魔力 技 速さ 幸運 守備 魔防 14 0 27 21 20 25 0 44 ステータス上限 クラス HP 力 魔力 技 速さ 幸運 守備 魔防 特徴 彼女が最も輝くのは10章でファイアーで狙撃されている場面な人も多いだろう。 元ネタ通りの成長率なので成長はあきらめざるを得ないが魔防だけやたら上がる。 運がいいと20あたりまで上がるので終盤のウォーム対策キャラになれる。 紅魔館所属なので支援関係は充実している。 成長率が低いが魔法が使えるのを利用していい削り役になることができる。 削って紅魔チームで成長が遅れがちなフランドールにとどめを刺させてあげよう。 支援に削りに回復にと名実ともにサポートキャラという位置づけになりえる。 支援会話 パチュリー (レベル3MAX時) 美鈴 (レベル2MAX時) 咲夜 (レベル2MAX時)
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○━・━・━・━・━・━・━・━□━・━・━・━…━・━・━・━☆━・━・━・━・━・━・━・━◇ 【小悪魔】 ※最新のステ:- ※最新の変更:- ○━・━・━・━・━・━・━・━□━・━・━・━…━・━・━・━☆━・━・━・━・━・━・━・━◇ 初登場:? 作成中